オージェイズ(The O'Jays)のエディ・リヴァート(Eddie Levert)の息子、ジェラルド(Gerald Levert)とショーン(Sean Levert)、2人の母親の教会友達の息子であるマーク・ゴードン(Mark Gordon)の3人によってオハイオ州クリーヴランドで結成されたトリオ。リヴァート(Levert)のことをまったく知らない人が、ここまで読んで思うことは、「なんだ、親の七光りか」。しかし、そうではないことは作品を聴いてもらえばすぐにもわかることだろう。
確かにデビューまでのプロセスは、他のアーティストに比べると、簡単であっただろう。しかし、そこからは実力の世界。親譲りの歌唱力はもちろんのこと、携わるプロダクションにハズレがないという神話まで作り出してしまうほどの存在に昇華した。
2nd『Bloodline』からメジャー・リリースとなった。その作品からのシングル「(Pop,PopPop,Pop)Goes My Mind」がいきなりブラックチャートを制覇。さらに3rd『The Big Throwdown』からの「Casanova」もR&Bチャート首位獲得。Popチャートでも5位を記録する大ヒットとなった。この2曲ですっかり全国区になったリヴァート。続く4th『Just Coolin'』でも「Addicted To You」「Pull Over」「Just Coolin'」の3曲がR&Bチャートを制覇。この3曲は、全くのニュー・ジャック・スウィングであり、時代的な背景を考えさせられるわけだが、そのプロダクションとともに彼らの歌声にも魅力があったのは確かだろう。
こののち、大ヒットといわれる曲は産まれていないため、「リヴァートは時代についていけなくなった」と揶揄されることもあるが、筆者はこれらのヒット曲を生み出していたからこそ、自分たちのやりたかった音楽をさせてもらえる環境になったのではないだろうかと思う。数字をのこしてから、やりたいようにやる。営業マンだったら最高の形である。
いずれにしても、その後の“しっかりとした、ホンモノのソウルを伝える”というスタイルには圧倒される。グループとしての最新作(ジェラルドとショーンにとっては結局最終作…)を聴けば、この成熟ぶり(ジャケ写も含めて)が確認できる。ジェラルドの『Voices』(2005)に、グループとしての最新曲がっ!!いよいよ復活の兆しが見える! そう思って疑わなかった。
しかし。2006年11月10日、ジェラルドが死去。享年40歳。当初、死因は心臓発作とされていたが、翌年に“肥満対策の薬物の多量摂取”と改められた。テレビ番組でダイエットにチャレンジしていたらしい。…本当に残念でならない。また、弟ショーンも2008年3月30日に死去。享年39歳。養育費未払い問題でクリーヴランドの刑務所で22ヶ月間の服役中であった。
悲しみの中、唯一残ったメンバーであるマーク・ゴードンは、ショーンとひそかに進行させていたプロジェクト、リヴァートⅡ(Levert Ⅱ)[ルード・ボーイズ(The Rude Boys)のドゥワイト・トンプソン(Dwight Thompson)も関わっていたが、レコーディング前に外れた]を再始動。新メンバー:ブラック・ローズ(Roosevelt “Blaq Rose”Griffin)=[ジェフ・レッド(Jeff Redd)とも関係するヴォーカル・グループ、フーズ・フー(Who's Who)に所属していたらしい]を迎え、2009年にインディより『Dedication』をリリースした。そこには、リヴァートを継承する、ミディアム~スロウが多く盛り込まれていた。
(2006.05.22/2011.04.24)