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-2022-

◆ビヨンセが躍動する

これまでの2年間と同様、コロナウイルス感染症は治まることはなかった。「withコロナ」という言葉も定着し始め、人類がコロナとともに生きていくことを選択させられたような1年間といえるのではないだろうか。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻など暗いニュースが続くなか、それでもエンターテインメントを楽しませてもらえること。この有り難さはかみしめなければならないだろう。

そのような背景の中のブラックミュージックシーンであるが、昨年のシルク・ソニック(Silk Sonic)の快進撃により、大きく男性陣に期待したのだが、結果はビヨンセ(Beyoncé)の圧勝であった。グラミー及びソウルトレインの両方で、R&Bとして賞を獲得する力量を見せつけられる。
 筆者的にはそのアルバム『Renaissance』は良く思わなかったのだが、グラミーで選出された、ブギーの「Cuff If」や、艶のある歌い出しの「Plastic Off The Sofa」には圧倒させられた。また、アイズレーズ(The Isley Brothers)とのコラボが「Make Me Say It Again Girl」であり、それが悪いはずもない。このあたりが彼女に翻弄されてしまうところで、(良い意味で)困ってしまう。

そのアイズレーと同様、ベテラン勢も作品をリリースしてきた。ベイビーフェイス(Babyface)はいつものオリジナルアルバムとは趣向を変え、女性ボーカリストをフィーチャーした『Girl Night Out』をドロップ。いきなりIPhoneのリング・トーンから始まる手法は、安易に若者のマーケットを意識したようだし、全体的に現代音楽へ寄せてきていることは仕方ないだろう。それでもアルバム中には粒もそろっており、「Keeps On Fallin'」なんて、フェイス節と90年代を理解しているエラ・メイ(Ella Mai)との溶け合いがたまらない。この楽曲は他の誰よりもエラ・メイを選ぶべきだと分かる1曲であろう。グラミーでは、“Best Traditional R&B Performance”を上記ビヨンセの「Plastic Off The Sofa」に譲ったわけだが、個人的にはこちらに軍配をあげたい。

個人的なベストは、シングルのみのリリースではなるが、K・ミッシェル(K・Michelle)「Scooch」。彼女の少しPOPよりな立ち位置がしっかりとハマった名スロウと言える。
 次点は勢いを感じたリゾ(Lizzo)の「About Damn Time」である。80年代・シック(Chic)が見え隠れするこのダンストラックは評価され、グラミーでもレコード賞を獲得している。
 なお、グラミーのベストR&Bアルバムは、ロバート・グラスパー(Robert Glasper)の『Black RadioⅢ』。その中の1曲「Better Than I Imagined」は、世界観は完全にミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)の物なのだが、参加したH.E.R.がそこに埋もれない存在感を放つことで、より現代風になったと言える。この楽曲の再生回数が半端ないことを鑑みると、まだまだR&Bは面白いなと感じる。

とはいえ、シーンを覆うのは、継続するアンビエント感である。昨年を起点としたシルク・ソニック(Silk Sonic)の流れから、ヴォーカル・グループが隆盛し…と、筆者の希望的観測な、思惑通りにはならなかった。じっくり聴かせて…というのは、時代が求めていないのだろうか。流行するのは時間の短い楽曲がほとんど(中には2分台もちらほら)である。「生音でじっくりと声を聴かせる」という真逆の発想は、やはり厳しいのだろうか。
 希望の光は、マニ・ロング(Muni Long)の「Hrs & Hrs」がグラミーR&B歌唱賞を受賞したこと。ノミネートに留まったジャズミン・サリバン(Jazmine Sullivan)の「Hurt Me So Good」とともに、スロウが支持されたことである。

(2023.07.09)

-2022年の主な出来事- 
  1. 02月:将棋藤井聡太四冠、10代で初の五冠に
  2. 02月:北京冬期オリンピック開催
  3. 02月:ロシア軍、ウクライナ侵攻
  4. 04月:千葉ロッテマリーンズ佐々木朗希投手    完全試合達成(完全試合は28年ぶり)
  5. 04月:知床遊覧船沈没事故
  6. 07月:安倍元首相、銃撃され死亡
  7. 09月:エリザベス英女王が死去
  8. 09月:西九州新幹線が開業
  9. 10月:円安、1ドル150円台後半に
       (32年ぶり)
  10. 10月:東京ヤクルトスワローズ村上宗隆選手
        56本塁打・史上最年少で三冠王に
  11. 10月:梨泰院群衆事故(韓国)150人以上が
        死去
  12. 12月:サッカーWC杯、森安JAPANは16強
音楽
Aimer「残響散歌」、Ado「新時代」
映画
『トップガン・マーヴェリック』
 
 
流行語
「村神様」「きつねダンス」「青春って、すごく密なんで」
訃報
石原慎太郎(2/1)西郷輝彦(2/20)
大伴良則(3/23) 藤子不二雄A(4/7)
小坂忠(4/29)上島竜兵(5/11)
ウィリアム・ハート[デルフォニクス](7/14)
サム・グッデン[インプレッションズ](8/4) 
オリビア・ニュートン・ジョン(8/8)
ジェシー・パウエル(9/13)
六代目三遊亭円楽(9/30)アントニオ猪木(10/1)
仲本工事(10/19)松本一起(11/4)
村田兆治(11/11)渡辺徹(11/28)
江沢民(11/30)水木一郎(12/6)
ペレ(12/29)
 

-2022年にリリースされた作品-

「Scooch」

/ K.MICHELLE

『Special』

/ LIZZO

『Make Me Say It Again,Girl』

/ THE ISLEY BROTHERS

doja cat

『Girls Night Out』

/ BABYFACE

summer walker still over it

『Flextended』

/ LE FLEX

 

 

 

 

 

 

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