ニューヨークはブロンクス生まれ(1969年)。ヒップホップ発祥の地、かつ治安も悪いこの地区で生まれたのであるが、その状況とは反して、美メロが大好きなプロデューサー兼ミュージシャンである。
父はクラブDJ。幼い頃からレコードに囲まれて育ったようだ。7歳の頃から作曲をはじめ、トランペットやピアノもマスターしていった。大学生の頃には、ジャズ・シンガーを目指して歌っていたこともあったという。母親がレニー・ホワイト(Lenny White)と知り合いであったことも影響しているようだ。
彼のキャリアのスタートは「Essence」誌のエディターからであった。その誌面でクイーン・ラティファ (Queen Latifah)の記事を手掛け、音楽への道を再び志すようになる。その後、バリー・イーストモンド(Barry Eastmond)と邂逅。この出逢いが、アニタ・ベイカー(Anita Baker)「I Apologize」(1994年グラミー賞(Best Female R&B)受賞)やブラウンストーン(Brownstone)「If You LoveMe」を生むこととなる。しかし、エディターの仕事をこなしながら、作家業も兼ね、なんと7年間も“二束のワラジ”的生活を送っていた。これはすごいことである。どちらの仕事も片手間では済ませない、忙しい仕事。並の人間にはできない芸当だろう。
その後、「Essence」誌を退職し、ミュージシャン業に専念。多数のアーティストを手掛けていく。2000年頃から、元キャラクターズ(The Characters)のトロイ・テイラー(Troy Talor)と組んで、さらに高みを目指していく。そのリレーション・シップから、05年に発表されたゴードンの初ソロ『Introducing...Gordon Chambers』は、共同プロデュースとなっている。
表舞台に登場したゴードンは、その後2年間、NYでライブを精力的にこなす。ようやく自分自身にしかできない作品を残したくなったというのが、2007年。2nd『Love Story』を発表。セルフカヴァ―で「If You Love Me」を歌うことで、シンガーとしての印象も与えてくれた。
3rd『Sincere』は2011年にリリース。ダニー・ハサウェイ(Donny Hathawey)のカヴァーを収録したり、ジェラルド・リヴァート(Gerald Levert)への敬意を評すなど、彼のルーツに迫りつつも新しい音楽への対応も見せた。
彼の功績は、彼のソロだけでは語れないことは言うまでもない。プロデュースしてきた作品の代表的なものだけを、列挙しておきたい。
■アニタ・ベイカー(Anita Baker)「I Apologize」
■ブランストーン(Brownstone)「If You Love Me」「Half Of You」
■カール・トーマス(Carl Thomas)「My Valentine」
■フレディ・ジャクソン(Freddie Jackson)「Private Party」
■パティ・ラベル&ロナルド・アイズレー
(Patti Labelle & Ronald Isley)「Gotta Go Solo」
■サム・ソルター(Sam Salter) 「Could've Been Me」
■シルク(Silk)「Because Of Your Love」
■SWV「Where Is The Love」
■テヴィン・キャンベル(Tevin Campbell)「Falling For You」
■TOSHI KUBOTA「Get It Together」
■アッシャー(Usher)「The Final Goodbye」
■ウィル・ダウニング(Will Downing)「Real Soon」
他 多数あり
(2006.05.26/2014.12.13)