昨年から引き続くニュージャック~90年代の再評価。年明けからクリス・ブラウン(Chris Brown)がシャニース(Shanice Wilson)の名曲「I Love Your Smile」を借用した「Undecided」をリリース。現代風にアンビエントに近づける雰囲気で歌って見せる。また、グラミーにもノミネートされた「No Guidance (feat.Drake)」も背景にチャカポコがちりばめられ、さながらキース・スウェット(Keith Sweat)といったところだろうか。
そのグラミー賞だが、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)が主要4部門を独占という快挙を達成。最優秀R&BソングはPJモートンfeat.ジョジョ(PJ Morton feat.Jojo)「Say So」。シンプルなメロディで音数を削ぎ落したエヴァ―グリーンな楽曲であり、時流とは無縁ともいえるものであった。
最優秀R&Bアルバムはアンダーソン・パーク(Anderson .Paak)の『Venture』。アンビエントとは遠い距離にありそうな嗄れ声で歌い、はたまたスモーキー・ロビンソン(Smokey Robinson)とのデュエットで70年代の回顧を見せる器用な作品。この2組の受賞から、ますます「流行りってなんなんだ⁇」と考えさせられてしまった。
そんなグラミーの結果を受けながらも、時流は変わらなかった。上記クリス・ブラウンの他にも、ニーヨ(Ne-Yo)が「Genesis」、年末にはタキシード(Tuxedo)も「Vibrations」でニュージャック。さて、いつまで続いてくれるのか…。
また、昨年同様にニュージャック後ともいえる90年代へのリスペクトも見えてきている。ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)がカーディ・B(Cardi B)と歌った「Please Me」を筆頭に、昨年から引き続きアンバー・マーク(Amber Mark)「Put You On feat. DRAM」が年を越えても話題となり、エラ・メイ(Ella Mai)のようなヴォーカルに比重をおいたアーティストもさらに指示を伸ばした。
グループも少しずつ生まれてきており、ネクスト・タウン・ダウン(Next Town Down)には期待せずにはいられない。彼らを後押しするようにベテラン勢もシーンへ復帰。ベイシック・ブラック(Basic Black)や3rdストーリー(3rd Storee)らがアルバムを発表した。
それから、ビヨンセ(Beyoncé)のライブアルバムのボーナストラックからヒットした、メイズ(Maze featuring Frankie Beverly)のカヴァ「Before I Let Go」や、マライヤ(Mariah Carey)の「A No No」でのジェフ・ローバー・フュージョン(Jeff Lorber Fusion)「Rain Dance」(よく使われてはいるが…)のサンプリングなど、筆者的にうれしい温故知新があった。
ニュージャック、90年代、良質なカヴァ…。さぁ期は熟した。後はヴォーカル・グループが登場する順番。出てこい!熱い男(漢)たちよ!
(2020.10.04)
-2019年にリリースされた作品-
『Juliet』
/ NEXT TOWN DOWN
『Love And Compromise』
/ MAHALIA
『Angels Pulse』
/ BLOOD ORANGE
『Ventura』
/ UNDERSON .PAAK
『FourFront』
/ ZO!
『Ⅲ』
/ TUXEDO