昨年のシーンを鑑みると、非常に期待が膨らんだ年になると予想した。「これから、またR&Bシーンは復活するはず!」と、個人的には息巻いていた。しかし、元旦に飛び込んできたニュースは、ナタリーコール(Natalie Cole)の死。なんとも暗い年明けとなってしまった。
それにしても訃報が続いた。最大のトピックは何といっても4月のプリンス(Prince)だろう。マイケル(Michael Jackson)の時同様、様々な形でひきづった。また、2月にはモーリス・ホワイト(Maurice White)が、6月はP.M.ドーン(P.M.Dawn)のプリンス・ビー(Prince Be)が、11月にはレオン・ラッセル(Leon Russell)が他界。ベテランたちが多く旅立ってしまう中で個人的に最もショックだったのは、10月のカシーフ(Kashif)の死去だった。良い楽曲を提供する人は必ずシーンに戻り、若手を育てるだろうと勝手ながら期待していただけに、非常に残念でならない。59歳。早すぎる才能の他界に、少しだけこのR&Bの居心地の悪い音楽シーンを恨んだ。
結局2016年も、R&Bシーンはポップスとの蜜月関係。そしてEDMを使用した音作りが目立ったものとなった。ジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)、リアーナ(Rihanna)、ウィークエンド(The Weekend)、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)などなど。ビジュアルも歌の世界に必要になったのか、という面々である。
ヒップホップ勢は、グラミー5冠のケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)や、ドレイク(Drake)らが名を挙げた。ドレイクがどれだけ売れたかの指標は、父親であるデニス・グレアム(Dennis Graham)が“R&Bの”アルバムを出せるほど売れた、ということなのではないだろうか。
そんな中、(筆者的に)うれしいニュースももちろんあった。マックスウェル(Maxwell)が、ようやく『blackSUMMER'Snight』を届けてくれた。最初に三部作構想が発表されてから年月が経過し、正直なところ筆者は「お蔵入りになるのでは…」とかなりマイナス思考で待っていた。それだけにうれしい誤算を心から喜んだ。
そして、シルク(Silk)もリル・G(Gary “Lil G” Jenkins)を含んでの復活、アフター7(After7)の21年ぶりのアルバム、アズ・イエット(Az Yet)の20年ぶりの作品など、カムバック組に恵まれ、またアンソニー・ハミルトン(Anthony Hamilton)やジャヒーム(Jaheim)といった深い味わいのアーティストの作品も届いた。そしてキース・スウェット(Keith Sweat)はキャリア最高峰とも言える『Dress To Impress』を発表。これは2017年も引き続き期待しろ!ということなのだろうと思っている。
チャート的にはアデル(Adele)やビヨンセ(Beyoncé)。しかし、一番売れたアーティストはプリンスだった(年間223万枚の売り上げを達成)という。まだまだ、ソウルは死んではいないと思う。
以前のグラミーでのプリンスの言葉、「みなさん、『アルバム』ってご存知ですか?」という問いかけを思い出した。リアーナの作品『Anti』は14時間で100万ダウンロードを数えたらしく、ダウンロード時代を痛感させられるわけだが、個人的にはアルバム単位で、可能な限りフィジカルで聴きつづけていきたいと頑固に思っている。
(2017.03.03)
-2016年にリリースされた作品-
『Timeless』
/ AFTER7
『Quiet Storm』
/ SILK
『Eric Benét』
/ ERIC BENÉT
『G-Incarna』
/ G-INCARNA
『Surrender』
/ GORDON CHAMBERS
『Struggle Love』
/ JAHEIM
『#mynameisjoethomas』
/ JOE
『blackSUMMER'snight』
/ MAXWELL
/ ANTHONY HAMILTON
『Still』
/ SWV
『24K Magic』
/ BRUNO MARS
『SkyBreak』
/ ZO!
/ KEITH SWEAT