インコグニート(Incognito)は、モーリシャス生まれ(1957年2月生まれ)のジャン・ポール“ブルーイ”モーニック(Jean-Paul“Bluey”Maunick)によるソロ・プロジェクトである。その歴史は古く、結成は1980年。イギリスのジャズ・ファンク界を背負ってきたチームだった。
1978年、ブルーイはライト・オブ・ザ・ワールド(Light of the World)というグループに所属していた。このジャズ・ファンク・バンドのツアー中、事故でメンバーを失ったことをきっかけに脱退。その後、フリーズ(Freeez)というバンドの結成に立ち会うが、ポップ志向が強すぎて脱退。そして、ようやく元ライト・オブ・ザ・ワールドのメンバーであったピーター・ハインズ(Peter“Stepper”Hinds)とポール・ウィリアムス( Paul“Tubbs”Williams)とインコグニート結成に至るのである。
1st『Jazz Funk』を発表し、全英28位を記録する。しかし、レコード会社から「もっとポップなものを」と要求され、またしてもバンドは休止する。その後、ポールはフィンランドへ移住。だんだんとインコグニートの存在も忘れられて行く…。
ところが約10年後、グループは息を吹きかえす。ロンドンでクラブDJをしていたジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)が“トーキン・ラウド(Talkin' Loud)”なるレーベルを立ち上げるのだ。インコグニートのファンであった彼は、第1号アーティストとして迎え、2nd『Inside Life』をリリース。「Always There」が大ヒット(UKチャート6位)する。続く3rd『Tribes,Vibes and Scribes』からは、スティービーのカヴァー「Don't You Worry 'bout A Thing」、4th『Positivity』からは「still A Friend Of Mine」が立て続けにヒット。確固たる地位を築き上げる。
95年の5th『100°and Rising』には、3rdから参加していたヴォーカリストのメイザ・リーク(Maysa Leak)は不参加だったが、ヴォーカル・オリエンテッドな作品を仕上げる。6th『Beneath The Surface』ではメイザがカムバックし、さらに深いヴォーカルを楽しめる。99年の7th『No Time Like The Future』では、ディアンジェロ(D’Angelo)のライヴに影響されたブルーイが、出来上がり寸前だった作品を一から作り直し、生音のグルーヴにこだわった。
21世紀に入っても活動は活発で、まずは初期ジャズ・ファンクを彷彿とさせる8th『Life,Stranger Than Fiction』、多彩なボーカリストを迎えた9th、『Who Needs Love』三度カムバックしたメイザのヴォーカルが炸裂する10th『Adventures In Black Sunshine』と様々な角度からの作品を届けてくれる。
05年には11th『Eleven』を発表。メイザの他に、イマーニ(Imaani Saleem)も迎えてさらにパワーアップした姿を見せてくれた。以降さまざまなアーティストたちと共演。今日までコンスタントに作品を出し続け、2014年現在では16th『Amplified Soul』 が最新作となる。
ちなみにインコグニートとは別にソロ作を発表したり、多数のプロデュースをこなしたりと、ミュージシャンの中でも多忙な人であるブルーイ。そのような中、初期から頻繁に来日。東名阪のほかに、福岡にも足を延ばしてくれることが嬉しく思う。ライブ会場にも一般席から入ってきたりと、非常に親しみやすい人柄を覗かせるのであった。
(2005.12.11/2014.12.20)