2014年の年末発売となるわけだが、特筆すべきは、やはりディアンジェロ(D'Angelo)『Black Messiah』。これがとりわけトピックスになった1年であった。このリリースをきっかけに林剛・荘治虫両氏による『新R&B入門 ディアンジェロでつながるソウル・ディスク・ガイド 1995-2015』という書籍までリリースされるという、まさにジャンルを活性化する作品ということになるだろう。実は、聴き始めるまでは、個人的にはD氏の新作に懐疑的であった。あの独特な世界観が、違う方向に走っているのではないか!?と。しかしその予想をありがたく裏切り、気が付けば何度も聴いていた。このあたりが彼の懐の深さなのかもしれない。
そんなシーンをさらに支えてくれたのがジョデシィ(Jodeci)。3月に久しぶりの新譜『The Past, The Present, The Future』を届けてくれた。 この2組の新作で、今後の90’sの復権を大いに期待したものである。
更に他のアーティストも続き、久しぶりにシーンへの期待を膨らませた一年であった。 代表的なものを書き出すと…(2014年10月のリリースからにはなるが)
♦(2014年)10月: デイヴ・ホリスター(Dave Hollister)
/『Chicago Winds The Saga Continues』
♦11月:チャズ(Chazz Mac)
/『Two Wrongs Don't Make It Right』
♦12月:ジョニー・ギル(Johnny Gill) / 『Game Changer』
♦(2015年)1月:デュアン・スコット(Duane Scott)
/『I Am Duane Scott』(特に「Late Nite Rendezvous」
が秀逸!)
♦1月:ジェフ・レッド(Jeff Redd) /『Down Low』
♦3月:ケイス(Case) /『Heaven’s Door』
♦3月:ローネイ(Laurnea) / 『Universal Love』
♦8月:ジ・インターネット(The Internet) /『Ego Death』
♦9月:
リサーフェス(Resurface)
/ 『Where Have You Been』
♦9月:アヴァーント(Avant) / 『Ⅷ』
♦10月:ジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)
/ 『Unbreakable』
♦11月:ロイ・アンソニー(Roi Anthony)
/『Gonna Do Me』
♦11月:アンジー・ストーン(Angie Stone) /『Dream』
♦12月:R.ケリー(R.Kelly) /『The Buffet』
♦12月:ベイビーフェイス(Babyface)
/『Return Of The Tender Lover』
個人的には久しぶりの豊作の年となった。そんな中、R&B・ソウルの”現在系”をある意味で象徴したのは、タキシード(Tuxedo)ではないだろうか。”進化した打ち込み中心の音を奏で、ネオ80'sを気取る、とでもいうような佇まいであった。”白人が黒人の音楽に憧れ、音を創りだす”。すでに定着した話ではあるが、80年代は真逆[=黒人が白人の生活に憧れ、それを音楽で表す戦略。例えばホイットニー(Whitney Houston)やアニタ・ベイカー(Anita Baker)ら]だったことを思うと感慨深いものがある。
こういった楽曲が流行った後には、必ず生音への揺り戻しがある。90’sリヴァイヴァルを、2016年こそ期待したい。
(2016.06.06)
-2015年にリリースされた作品-
/ DUANE SCOTT
『Heaven’s Door』
/ CASE
『Universal Love』
/ LAURNEA
『Ego Death』
/ THE INTERNET
『Where Have You Been』
/ ReSURFACE
『Ⅷ』
/ AVANT
『Unbreakable』
/ JANET JACKSON
『Gonna Do Me』
/ ROI ANTHONY
『Dream』
/ ANGIE STONE
『Buffet』
/ R.KELLY
『Return Of The Tender Lover』
/ BABYFACE
『Two Wrongs
Don't Make It Right』
/ CHAZZ MAC
『Return To Love』
/ DEVON HOWARD