昨年から引き続きコロナウィルスが蔓延。終息する気配もなく、現在も人間の生活を変化させている。ライヴもオンラインなど工夫が施されてはいるものの、やはり生音には適わない。しかし、それでも音楽を伝えていくこそが一筋の明かりだと、アーティストたちは前を向いていることがなによりも嬉しいことであり、ありがたいことである。
ブラックミュージックの世界に目を向けると、筆者的にはここ数年で一番嬉しい年となった。なんといってもシルク・ソニック(Silk Sonic)の快進撃である。70年代のスウィート・ソウルへのオマージュと言える「Leave The Door Open」は、ソウルトレイン、グラミーどちらでも主役となった。グラミーではノミネートされた4部門すべてを受賞。こんな直球のR&Bが、この2021年に大きな支持を集めるなんて、本当に嬉しくてならない。まさか小学3年生の自分の息子が「Smokin' Out Of The Window」のダンスを完コピするようなことになるなんて!彼らのおかげで、いつもとは違う角度でR&Bを楽しむことができた。
また、彼ら以外で息子とよく歌ったのは、なんとジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)の「Peaches」。グラミーに(きちんとR&Bにカテゴリーされて)ノミネートするほど有名な楽曲なわけだが、まさか彼の曲を聴きこむことになるとは思ってもいなかった。
逆に予想通り?良かったと思ったのは、昨年からお気に入りと記していたドージャ・キャット(Doja Cat)。歌声、容姿ともどちらかというと苦手なのだが、なぜか気になってしまう。そしてこちらもグラミーで最優秀R&Bパフォーマンスを受賞した曲ではあるが、「Kiss Me More」の素晴らしさ。SZAをフィーチャリングしているとはいえ、ほぼドージャの世界(SZAの助演女優賞ぶりはもちろんすごいです)。プロモーションビデオはよくわからない内容だったが…。筆者にとっては、ラップのような歌のようなよくわからないところがある楽曲をここまで聴いたのも珍しいことだった。
そして例年どこかで不満を持ってしまう賞レースについても、個人的にはとても納得したものだったことも珍しい。ソウル・トレイン・アワード(Soul Train Awards)で、最優秀アルバムを受賞したのはジャズミン・サリヴァン(Jazmine Sullivan)『Heaux Tales』、楽曲賞はシルク・ソニック「Leave The Door Open」と、グラミーともども頷いてばかりだった。
賞レース以外では、サマー・ウォーカー(Summer Walker)『Still Over It』は予定通り?良かった。そして容姿から想像できなかったのはピンク・スウェット(Pink Sweat$)だろう。彼の存在はもちろん知っていたが、きちんと聴いたのは『Pink Planet』がはじめて。なんとなくただの色物的なイメージを持っていたのだが、そんなことはなかった。D・マイル(D'Mile)らも参加していて、(良かった!という意味で)予想外の衝撃度では一番だった。
時代はアンビエント感、トラップソウルなどが続いているわけだが、シルク・ソニックを起点として、「歌がうまい!」と唸りたくなるアーティストがたくさん登場することを願いたい(毎年同じようなことを言っていますが…)。ラッキー・デイ(Lucky Daye)もアース(Earth,Wind & Fire)の「Can't Hide Love」をリメイクした「You Want My Love」を本人たちと歌っているし、そういう機運がある気がするのだが…。
(2022.04.11)
-2021年にリリースされた作品-
『An Evening With Silk Sonic』
/ SILK SONIC
『Heaux Tales』
/ JUZMINE SULLIVAN
『Pink Planet』
/ PINK SWEAT$
『Planet Her』
/ DOJA CAT
『Still Over It』
/ SUMMER WALKER