1976年9月2日生まれ。イリノイ州ハーヴェイ出身。アル・グリーン(Al Green)とともにハイ・サウンドを支えたシル・ジョンソン(Syl Johnson)を父に持つ。当然のように父の影響を受け、デルズ(The Dells)やアレサ・フランクリン(Aretha Franklin)などを聴いて育つ。地元ドルトンの高校へ進学するとクワイアに参加。当然音楽の道へ進むかと思われた。しかし1994年、アイオワ州のドレイク大学へ進学すると、何と心理学を専攻。まだ進むべき道に迷っていたことが分かる。その後、音楽専攻にコースを変更し、ジャズやクワイアを学んだ。このころ楽曲の制作を始めたようだ。1996年にイリノイ州立大学へ転校。やはり音楽を専攻する。ここで転機が訪れる。1997年9月。バスケットボールの試合を観戦に訪れていたジャイヴ(Jive Records)のスカウトにデモテープを渡すことができた。すると数日後にはディールを獲得していたという。こうして彼女のミュージシャンとしての扉が開かれた。
契約後はアルバム制作に勤しむが、1999年に発表予定であった『Love Hangover』はお蔵入り。ミュージシャンとしてはなかなか思い通りの活動とは行かなかったようだ。そのような中でもプライベートは充実。2000年、同じ大学のバスケット・ボール・プレイヤーであった、マーカス・ベッツ(Marcus Betts)と結婚(彼は卒業後に彼女のマネージャーになった。)する。
ようやく1st『ChapterⅠ: Love,Pain & Forgiveness』をリリースできたのは2001年。リアルな世界観を歌い上げる魂のこもった歌声と、同郷のR.ケリー(R.Kelly)のペンによる「I Am Your Woman」がシングルに選ばれたことが話題になった。しかし数字的には成功とは言えなかった(R&Bチャート16位)。
2002年に2nd『ChapterⅡ:The Voice』を発表。「Tonight I 'm Gonna Let Go」が英国TOP40にチャートイン。徐々に知名度も上ってきた。
そして彼女の存在を大きく知らされることになったのは、カニエ・ウェスト(Kanye West)の作品「All Falls Down」だった。彼女が3rd『ChapterⅢ:The Flesh』のレコーディングをしていた隣のスタジオで、カニエもレコーディングしていた。この楽曲でサンプリングする予定だったローリン・ヒル(Lauryn Hill)「Mystery Of Inquity」の許可が下りなかったため、“シリーナ、ここをちょっとこういう風に歌ってみてよ”と頼まれ、急遽彼女が歌うことになったようだ(『bmr』 2005.11 No.327)。その楽曲が2ndシングルに選ばれ、なんとグラミーに10部門ノミネート。軽く頼まれたこの楽曲がこうなるから面白い(もちろん彼女の力あってのことではあるが)。このことがきっかけで、様々なアーティストの楽曲に客演している。
そのような背景から、2005年にリリースした3rdはR.ケリーのほか、ケイジー(Kaygee)、ジャーメイン・デュプリ(Jermaine Dupri)などのプロデューサー、ゲストとしてアンソニー・ハミルトン(Anthony Hamilton)を招くなど、豪華なラインナップとなった。内容も充実したこの作品はチャートでも話題になると思っていたのだが、R&Bチャートでも15位止まり。またしても不本意な数字となってしまう。
3rdリリースの後、前夫との離婚後に知り合った、バスケット選手(またですか!)のキワイン・ギャリーズ(Kiwane Garris)と2006年に結婚。出産を経てリリースした4th(2009年)のタイトルは『Labor Pains』(産みの苦しみ)と名づけられる。“息子が生まれて、母親としても希望に満ちていたし、私は自分がその時実際に置かれている状況から曲を書くのが好きだから、“産みの痛み”というタイトルになった。”(『bmr』2011.12 No.400)と本人が語っているように、音楽に対する深い愛情をかけていることが分かる。そういった彼女の音楽に対するストイックな姿勢を鑑みると、2011年発売の5thのタイトルを『Underrated』(不当評価)としてしまうこともうなずける。彼女のような本物のアーティストが浮上してくることが可能なシーンとはいえないが、評価されることを祈りたい。
2012年に5thからの作品をメインとしたライブ作『Acoustic Soul Sessions』(デジタル配信のみ)、2013年にはミュージック・ソウルチャイルド(Musiq Soulchild)とのコラボレーションによるレゲエ盤『9ine』をリリースしたりと、今までとは違う多様性を表現。二人のコラボ盤はソウルを歌って欲しかったという思いはあるのだが、次の機会に期待したい。
2014年には6th『ChapterⅣ:Couples Therapy』をリリース。個人的にはR&Bディーヴァの中では、キーシャ・コール(Keyshia Cole)と並んでソウルを感じさせてくれる実力者だとと思っているので、このペースで順調に活動してもらいたい。
(2012.07.28/2015.04.15)