1. 2019
  2. « Review(Year) 2019 »
  3. 2017
  4. privatesoulmusic

-2018-

◆30年目での輪廻転生

長いグラミー賞の歴史の中で、初めてラップのアルバムが最優秀レコード賞に輝いた。チャイルディッシュ・ガンビーノ(Childish Gambino)「This Is America」である。この作品は音楽はもとより、MVが大きな話題となった。トレイボン・マーティン射殺事件(ヒスパニック系の自警団が、アフリカン・アメリカンのトレイボンを射殺した2012年の事件)を思い起こさせるようなシーンから始まり、様々な社会的意味が込められていると言われている。そのタイトルが「This Is America」であり、それがグラミーを獲得するわけである。多くのアフリカンん・アメリカンが、そしてその他の人種の人が、様々な思いを抱いたことだろう。
 もはや人気のある大衆音楽になったR&B、ヒップホップではあるが、これが一つのブームで終わらないことを願いたい。

R&Bシーンは前年からの勢いのまま女性たちの活躍が目立った。上記グラミーでは、最優秀R&Bアルバムには、ハー(H.E.R.)のセルフタイトルが、最優秀R&Bソングには、エラ・メイ(Ella Mai)「Boo’d Up」がそれぞれ受賞。これには男声ヴォーカルものを贔屓する筆者も大きく頷ける。特に後者は良く聴いた。

流行として喜ばしいのは、やはりニュー・ジャック・スウィングの再評価である。仕掛人は言うまでもなく、前年のアルバム『24K Magic』でその方向性は見せていたブルーノ・マーズ(Bruno Mars)。「Finesse」は音もPVも完全に80年代後半である。最初に見たときは目を疑うほどで、「これが21世紀なのかぁ(ニヤニヤ)」と思ってしまった。
 それを筆頭に、自ら“ニュー・ジャック・スウィング・シンガー”と言ってしまうデリック・ゴーボン・ジュニア(Derric Gobourne Jr.)が出てきたり、シック(Chic)が『it's About Time』にテディ・ライリー(Teddy Riley)を参加させたり、ボビー・ブラウン(Bobby Brown)テディ・ライリー&ベイビーフェイス(Babyface)のプロデュースで楽曲を発表したりと、しっかりとブームとなった。このところのシーンはブルーノ・マーズが握っていることは確かである。

さらにアンバー・マーク(Amber Mark)「Put You On feat. DRAM」やエンジェル(Angel)「Nothing Wrong」(R.ケリー「BumpN' Grind」遣い)などの欧州勢や、コモン(Common)が新しく結成した、オーガスト・グリーン(August Greene)が、ヴォーカルにブランディ(Brandy)を迎え、サウンズ・オブ・ブラックネス(Sounds of Blackness)「Optimistic」をリリースしたりと、確実に90年代への足音は聴こえている。

この時流は、筆者にとって心地が良い。この状況のまま90年代のようなボーカル・グループの隆盛を期待したいのだが、果たしてその希望は満たしてもらえるのだろうか。今から楽しみでならない。

(2020.01.01)

-2018年の主な出来事- 
  1. 02月:平昌オリンピック開会
  2. 04月:JASRACが音楽教室からも著作権料の
        徴収開始
  3. 05月:希望の党と民進党による新党「国民民
        主党」が発足
  4. 06月:FIFAワールドカップロシア大会開幕
        日本はベスト16
  5. 06月:「ドカベン」の連載が終了
  6. 07月:オウム真理教事件関与の死刑囚の死刑
        が執行
  7. 08月:第100回全国高等学校野球選手権大会
        決勝は大阪桐蔭vs金足農
  8. 08月:山口県周防大島町で行方不明の2歳男
        児を、ボランティアの尾畠春夫氏が発
        見
  9. 09月:大坂なおみが全米オープンを制覇。
        4大大会での優勝は日本人初
  10. 09月:千葉ロッテマリーンズ福浦和也内野手
        が2,000本安打を達成
  11. 11月:日産自動車カルロス・ゴーン会長逮捕
音楽
米津玄師「Lemon」 DA PUMP「U.S.A.」
映画
『カメラを止めるな!』『万引き家族』
   『ボヘミアン・ラプソディ』
ドラマ
『西郷どん』
流行語
「そだねー」「スーパーボランティア」
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」
訃報
有賀さつき(1/30)デニス・エドワード(2/1)
   大杉連(2/21) ラッセル・ソロモン(3/4)*
   高畑勲(4/5) 衣笠祥雄(4/23)
チャールズ・ネビル(4/26) 西城秀樹(5/16)
   桂歌丸(7/2) 津川雅彦(8/4) さくらももこ
(8/15) アレサ・フランクリン(8/16)
小田裕一郎(9/17)** 山本KID徳郁(9/18)
   ワーワー・ワトソン(10/24)
   佐山雅弘(11/14)
   
   *  タワーレコード創設者
   ** 作曲家

-2018年にリリースされた作品-

ella_mai

『Ella Mai』

/ ELLA MAI

『Supermacy』

/ Derric Gobourne Jr.

『Woman』

/ ANGEL

『Sex & Cigarettes』

/ TONI BRAXTON

dmaestro

『Got It All』

/ D'MAESTRO

『Playing For Keeps』

/ KEITH SWEAT

『Blu Eyed Soul』

/ BLU MITCHELL

 

 

 

 

TOPへ