カルフォルニア洲オークランドで活動を継続する元トニートニートニー(Tony Toni Toné)のヴォーカリスト。本名:ウィル・デイヴィス(Will Davis)。ラファエル・サディーク(Raphael Saadiq=Charles Ray Wiggins:1966年生)と小学校から高校まで一緒だったというから、65年か66年生まれということになる。同級生とはいえ、エイマーはラファエルの甥っ子にあたる。
4人姉弟の2番目にあたるエイマーは祖父母に育てられた。小学校のころにドラムを叩くようになり、中学校ではラファエルがベース、エイマーがヴォーカルというバンドを組んでいた。また高校でもラファエルとティモシー(Timothy Christian Riley) とキャリアーズというクワイアに参加していた。またアン・ヴォーグ(En Vorge)のドーン・ロビンソン(Dawn Sherrese Robinson)も同級生だったとのこと。そんな環境であったため、音楽の道を志すのは必然であったと言える。
ラファエルらは先にトニートニートニーとしてデビュー。彼らの足跡はグループの項に譲るが、すでに人気アーティストになっていた。エイマーはまだ表にでることはなく、アン・ヴォーグのパーソナル・ナネージャーを担当したり、サックス奏者のJ・スペンサー(J.Spencer)とも活動をともにしていた。1992年に地元のレーベルと契約し、ソロアルバムをリリースする予定もあったらしいが、結局レーベルの倒産によりお蔵入り。なかなか順調には行かなかったようだ。
転機が訪れたのはトニーズが『House Of Music』(1996)のリリースし、その後ラファエルがグループを脱退してからのこと。ラファエルの兄ドゥエイン(Dwayne Wiggins)がソロ作を準備していたところに、エイマーが顔をだし、その場でコーラスを依頼。エイマーの歌声を聴いたドゥエインはラファエルの後継者として彼をトニーズのヴォーカリストとして指名することになった。
2003年にはトニーズの一員として来日。ブルーノート福岡でのパフォーマンスは、「ラファエルなの??」と勘違いさせられるほどそっくりで、しっくりとなじんでいた。そのころからソロ作の用意はあったようだが、祖母の死を受けゴスペル作のリリースに気持ちが切り替わった。
2006年にゴスペル界の若手、ジェイミー・ホーキンス(Jamie Hawkins)がプロデュースした『Where There's A Will,There's A Way』をリリース。詞を読まないと完全に世俗R&Bと言える曲作りは、ジェイミーの得意とするところ。エイマーの世界観としっかりとかみ合った作品となった。
2018年にトニーズを脱退しているものの、現在もオークランドで活動は続けている模様。結局、彼の声をトニーズの作品として残せていないのは残念である。
(2020.05.10)
*参考文献『bmr』2006.02(No.330)