1. 『Where There's A Will,There's A Way』
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『Where There's A Will,There's A Way』(2006)2006
the real thing

Review

-一聴するとR&B作品-

「祖母が亡くなり、いろいろと考えることが多くなった。身近な人を同時期に数人亡くしたから、もう一度ソロ・プロジェクトに挑戦するのなら、普通のR&Bやヒップホップじゃなくて、もっと内容の濃いスピリチュアルなものをやらなければって思うようになったんだ。」(『bmr』2006.02 No.330)

そう本人が語るように、詞を読めばしっかりとゴスペルである。しかしながら、知らずして聴くとこれはR&Bの作品である。エイマー本人とプロデュースしたジェイミー・ホーキンス(Jamie Hawkins)の狙いであり、得意とするところである、「聞きやすい(受け入れやすい)ゴスペル」という感覚は、この作品を聴けば充分に理解できるだろう。

-否定できないし、する必要もなく-

この作品には職人気質のトニーズ(Tony Toni Toné)のメンバーが参加していない。これはあくまでソロ作品であり、トニーズの作品ではないことが強調させたいというエイマーの意向なのだろうが、逆にジェイミーがトニーズに寄せてきたのではないだろうか。本人はどう思うかわからないが、前半の曲はトニーズに直結するポップなファンクである。イントロに続く②「Higher」~④「Thank You」は、“かっこよくとがりながらもカワイイところが見え隠れする”というラファエルから続くトニーズ系譜であることは間違いない。特に③「I See You」の明るい雰囲気にのるナヨ声と、どことなく漂わせる(でも薄味に仕立てる)憂い感には、往年のトニーズファンにはツボだろう。

-曲順からも感じ取れる-

前半に限らず後半も同様な(安心できる)ラインナップ。エッジの聴いた⑧「Can't Stay Away」⑨「Solitary」は洗練されたファンク。対照的な王道スロウ⑩「Quickly」はフォーキーなバラード。このギャップを感じる曲の配置がますますトニーズを思い起こしてしまう。ただ、アウトロの存在感があまり感じさせられないのが残念な気がした。

-ウォルター&トラメインの息子でも-

それにしてもジェイミー・ホーキンスの身のこなしは軽い。軽いと言っても悪い意味ではなく、柔軟と言い換えればいいだろうか。やはりゴスペルの名門一家であるわけだから、もう少しクワイアを入れたりというのがあるのかと思いきや、それがない。言い換えれば押しつけがましくないのである。それよりも広く、みんなに聴きやすいようにと心がけて、ゴスペルの垣根を広げているのだろうと思われる。筆者は決してゴスペルのクワイアなどが嫌いではなくむしろ好きなのだが、それでもこの潔さが素晴らしいと感じさせてくれる。

(2020.05.10)

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