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『Down Low』(1994)1994
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Review

-レア盤として名を馳せる-

ジェフのこの2nd『Down Low』は、リリース直前に回収になってしまった。こういう場合、ある程度は出廻るものだが、この盤については全世界で約1,000枚ほどしか流通しなかったそうだ。そのため、オークションでは10万円超えが常。「BMR」誌で石島春美さんが絶対に手放さないと言っていたことを思い出す。

-ようやくリイシューが決まる!-

そんな貴重盤が日本がイニシアティブをとり進められた。それによりようやく多くの人の耳に触れることが叶った。無論筆者もその一人である。しかもJAMさんの解説付きという特典付き。これは買わない理由が見当たらない。

-大切なのはその中身-

貴重盤ということばかりが先行してしまっていたため、さてその中身はどうなのだろう。前半は後期ニュージャックともいえるアップ~ミディアム、後半にスロウがまとめられている。

冒頭はシングルの①「Show You」は、まさしくニュージャックとヒップホップ・ソウルの融合。93年に制作されたものだろうから、黎明期というには熟しているが、その絶妙なバランスが楽しめるミディアム。JAMさんの解説を引用すると、

“NJSの呪縛から完全に脱し、ヒップホップの興隆で再解釈を促された時代と共にあるべきR&B本来の姿というものをこの“Show You”はシンボリックに我々に教えてくれたのである。”

と記されているわけだが、リアルタイムで聴いていたとしたら、筆者も同様のことを思わされたことだろう。こうして後の時代から聴いてもそれは明らかである。

ニュージャックの香りを残したアップ②「You Called And Told Me」はサントラ『Strictly Business』にも提供された楽曲。とすれば時代的に合点がいく。B.B.&Qバンド(B.B.&Q Band)のカヴァである③「Dreamer」や、と同路線の④「I Still Do Care」などは時代背景とともにその音像を楽しむものだろう。

-やはりスロウで力量を発揮-

圧巻は後半の3曲。⑧「Down Low」⑨「Let’s Spend The Night」⑩「Take It Off」である。出色の出来は。ジェフ本人と、元ジャマイカ・ボーイズ(Jamaica boys)ディンキー・ビンガム(Dinky Bingham)の2人が共作した珠玉のスロウである。導入の語り、切ない鍵盤の音色、むせび泣くように歌うジェフ…。すべてがそこに揃ったバラッドに仕上がっている。ニュージャック・スロウの⑨はアルトン・ウォーキー・ステュアート(Alton "Wokie" Stewart)。この時代に活躍した彼らしいプロダクションと言える。

-主なプロデューサー-

上記で触れたが、主要プロデューサーはディンキー・ビンガム(①⑤「Sex Ain’t The Only Thing」⑥「Why? (My Guilt)」⑦「Hard Soft, Slow Fast」⑧)アルトン・ウォーキー・ステュアート(④⑨)ということになる。 個人的にアルトンの作風はお気に入りなのだが、この作品での肝となる①⑦は、どちらもディンキーの手によるもの。個人的な見解だが、やはり先を見据えた感、先取り感が強かったディンキーが、業界に長く残ることになったのは当然と言えようか。

-ボーナス・トラックもありがたい-

2006年に“Sol Real Records”からリリースされた、新譜サンプラーのような作品からの収録となった⑪「Hold On」は唯一2、21世紀のジェフ作品。近年の作風につながるミディアムが収録されている。

(2015.10.27)

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