1. 『The Whole Scenario』
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『The Whole Scenario』(1997)1997
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Review

-ようやくジャケットに納得!-

正直なところ、リヴァート(Levert)のアルバムといえば、「えっ!?なんでこんなジャケ写!?」って思うことが多かった。“若気の至り”とでも言おうか…。「なんでジャージ姿なん!? 」みたいな(笑)。そんなグループもジェラルドが30歳を迎えたことが影響されて!?アダルトな印象になった。初めてジャケ写に満足した作品である。

-土台-

その印象はアルバムにも垣間見れる。ミディアム~スロウを中心とした成熟したナンバーが連なる。楽曲のよさは相変らず。ということは、やはりジェラルド(Gerald Levert)&エドウィン・ニコラス(Edwin Nicholas)のコンビの力が大きいのかと思いきや、半数以上プロデュースしたのは、マーク・ゴードン(Mark Gordon)。リヴァートというとどうしてもジェラルドの印象が強いが、この作品の土台を築いているのは、マークのプロデュースした楽曲だ。

-マークが織り成すリヴァート色-

ジェラルド&エドウィンのプロデュースによる、南部的でありながらリヴァート色をはっきり打ち出しているミディアムの①「Whole Scenario」。それに続く②「Do It Right Here」の出来が秀逸である。いきなりベットルームへ招待されてしまう。詞のテーマはメイクラヴ&とろける音…。まさしくR.ケリー(R.Kelly)の世界だ。それにジェラルドの太い声が重なる。さらに深いところまで落ちていってしまいそうだ。③「You Keep Me Comin'」もその世界を引き継ぐ。ただし、途中で入るラガ的なラップには…。セクシーな世界から現実に引き戻されるようで、ちょっと残念な気がしている。

-耳に残るのは…-

⑥「Swing My Way」でのシャカ・カーン(Chaka Khan)のネタ使いや、⑧「Keys To My House」にはミッシー・エリオット(Missy Elliott)を参加させたりと、このアルバムの色付けにも工夫が施されている。

しかしながら、耳に残るのは、⑨「Playground」~⑪「Ain't No Thang」では、地味でありながらも基本に忠実に音をつなげ、このアルバムの完成度を高めているように感じる。中でもでは、愛した女性の浮気を乗り越えるという内容の歌で、前向きな音作りのなかにも、若干憂いをかんじるホーンセクションを配置し、どこか淋しげな味を残したという微妙なバランスに仕上げている。

-核となる曲-

マークのプロデュースを見てきたが、核となっている曲にはジェラルドとエドウィンの仕事。前出のや、お行儀の良い、白人系のにおいのする⑤「Sorry Is」もあるが、なんといっても⑫「Mama's House」。ジェラルドが母親に贈った曲である。この曲を聴くと、ジェラルドのソロ『Love&Consequences』(1998)に収録されている、息子レミカくんをフィーチャーした「Humble Me」を思い出す[*1]。バンドの名前からも伺えるが、本当に家族愛を大切にする人だと、改めて感じた。

-最終作となったが…-

最新作、結局最終作。ジェラルドのソロももちろん大好きだけど、“グループとしての意義がある3人組”の復活はみんなが待っていたと思う。それが叶わなくなった今、マーク・ゴードンが継承する、リヴァートⅡ(LevertⅡ)に期待せずにはいられない。そろそろ新作を聴かせてもらいたいものである。

(2006.05.22/2011.04.24)

[1]筆者はその声から、長年女の子と思っていた…。英語をきちんと勉強しないとと思いつつ、年齢だけ重ねてしまう自分を憂う。

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