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『Just Coolin'』(1988)1988
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Review

-“リヴァートらしさ”とは-

発売当初は時流に乗り、きちんと成績を残し、その後は時代に左右されないスロウが魅力。
 リヴァートというグループを一言でまとめるとそのようになるのではないかと思うのだが、本作はまさしくその言葉どおりになっている。

-常にチャートを席巻-

アルバムリリース前に先行シングルとしてリリースされたのは⑪「Addicted To You」[*1]。前作からの最後のシングルカットが、ミディアムなシャッフル「Sweet Sensetion」であったことから、リヴァート・ファンも待ち構えていたであろうニュージャックなアップは、当然のようにヒット。R&Bチャートをなんなく登頂してしまう。その勢いのまま同様のアップ①「Pull Over」を、またヘヴィ・D(Heavy D:Dwight Arrington Myers)をラップに迎え、さらにストリートに寄せてきた②「Just Coolin'」をたたみかけるようにリリース。前者はR&Bチャート2位、後者は1位を記録する。ここまでくれば、親の七光りなんて言葉は誰も語れなくなるほどの存在というもの。アトランティックを代表するアーティストにまでのぼり詰めたといえる。実際、このアルバムからは、5枚もシングルがリリースされているという現在では考えられない状況で、それほどまでにリヴァートが求められていたことがよくわかる。

-真骨頂-

5番目にシングルカットされたのは、スロウの⑧「Smilin'」。チャート・アクションはR&B16位と、(通常考えるとヒットだが)上記アップと比較するとおとなしめであった。しかし、リリースから30年以上たった現在、アルバムの曲ごとのSpotify再生回数は、に次いで多い。また、シングルカットされずとも各所で紹介される名スロウ⑨「Start Me Up Again」もその数字に続いており、まさしく時間を越えて愛されるスロウ=リヴァートの魅力ということが、数字的に証明されている。
 は、仮にBPMを速くすればクラブヒットが狙えるようなリズミカルなスロウで、チークにもってこいの横揺れ系。リヴァート周辺のほか、テディ・ペンダーグラス(Teddy Pendergrass)の作品にも参加しているロン・ケルバー(Ron Kerber)のサックス・ソロの収まりがたまらない。または、クレジットこそ無いが、ショーン(Sean E.Levert)がリードをとったもの。ジェラルド(Gerald Levert)ほど厚くはないシーンの声を、ニュージャック・スロウのマナーで大きく補い、メロディラインの秀逸さで楽曲を昇華させている。
 リリース時はアナログであったことから、①~⑤までがA面、⑥~⑪がB面となっており、Web上では、“B面が好き”という意見が多数見られる。ミディアムの3つ打ちビートが小気味よい⑥「Let's Get Romantic」、冒頭に語りが入る三連系の⑦「Feel Real」、ジェラルドのヴァリトンを楽しめ!と言わんばかりの音数の少ない⑩「Loveable」と、非の打ち所の無い作りになっている。

-急に誕生したニュージャックではなく-

全曲をジェラルドとマーク(Marc Gordon)の共作・プロデュース[*2]で仕上げた初の作品でありながら、セールスもよし。前作で大ヒットした「Casanova」は、レジー・キャロウェイ(Reggie Calloway)の力も大きかったことから、この成功はきっとグループとして大きな自信になったに違いない。

(2022.01.03)

[*1]日本盤には、記述は無いがリミックスが収録されている。スクラッチがフィーチャーされており、それは角松敏生「I Can't Stop The Night」のよう。角松さんはこれを85年にやっているわけで、改めてその時代を先取りする力を感じる。
[*2]⑪は、エディ・リヴァート(Eddie Levert)も共作した。

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