1. 『Rope A Dope Style』
  2. LEVERT
  3. artist
  4. privatesoulmusic
『Rope A Dope Style』(1990)1990
levert-the_whole_scenario

Review

-かなり悩んだのでは-

前作の大ヒットを受け、インターバルが1年以上あいた5th。とはいえ、この期間は前作から立て続けにシングル・カットを行っていたため、ご無沙汰感はなかったはずである。しかし、制作側の悩みとしては、「さて次作もどうヒットさせるか」ということではなかろうか。時は90年。ニュー・ジャック・スウィングも充実期に入り、新たな物が求められていたはず。そのような中、回答を出さなければならなかったと思われる。

-筆者の聴くチカラの無さ-

その方向性は、さらなるヒップホップとの共存であった。この判断は正しく、後にメアリー・J ブライジ(Mary J.Blige)が登場するように、メインストリームの流れをうまく掴んでいた。このあたりは流石である。
 しかしながら、筆者としてはその方向性を示した①「Now You Know」②「Rope A Dope Style」は詞の内容も含めてどうも肌に合わず…。アップでは、ニュージャックの中にチャッキー・ブッカー(Chuckii Booker)[*1]を感じずにはいられない③「Absolutely Positive」や、レゲエ調のリズミカルな⑨「Hey Girl」が楽しめるわけだが、本作でヒットを狙ったであろう楽曲[*2]は、どうにも苦手である。

-求めてしまうスロウ-

しかし、スロウは相変わらずの安定感である。ティーナ・マリー(Teena Marie)と共演した「A Rose By Any Other Name」の原型と言えそうなメロディラインの④「All Season」は、イントロからトレヴェル作品には良く参加していたラッセル・トンプソン(Russell Thompson)のアルトサックスのソロで雰囲気を作り、ジェラルドの“吠え”が堪能できるという、リヴァートらしさ全開のスロウ。続く⑤「Rain」は、おそらくショーン(Sean E.Levert)が歌っているであろうファルセットを中心に、彼女とうまくいかない寂しさを表現。ブリッジで力強く歌うジェラルドもまた魅力的である。
 また、ベタなタイトルが続く⑦「I've Been Waiting」⑧「Baby I'm Ready」はもはやお家芸といえる官能的なスロウ。ジェラルドの語り、バリトンヴォイス、それに誘う詞…。「待っているよ…、準備は出来てるよ…」と、組曲として聴きたい構成になっており、個人的にはアルバムのハイライトと言えると思っている。シングルカットされた⑧は、リヴァートとして最後のR&Bチャート登頂となった。

-実験的な要素もあったのではないか-

前出のとおり、ヒップホップへの歩み寄りを見せた本作。もともとその素養とセンスは持ち合わせていたわけだが、ここまで寄せてくるとは思っていなかった。次作『For Real Tho'』もヒップホップ・ソウルを見せたりと時代の荒波を感じる作品なのだが、この作品と次作はかなり実験的というか、時流を鑑みて作られたものだったのではないだろうかと推察している。安定のリヴァートにしては、振り幅の大きい作品[*3]といえるだろう。

(2022.01.22)

[*1]今回はチャッキー・ブッカー自身は参加していない。
[*2]シングルは、②「Rope a Dope Style」⑩「Give A Little Love」と続いた。その後、スロウの④「All Season」⑧「Baby I'm Ready」がリリースされている。アルバム自体は、POPチャート122位、R&Bチャート8位を記録。ゴールドアルバムに認定されている。
[*3]とはいえ、あくまでリヴァートの中で、という程度のもの。

List

TOPへ