-ジェラルドのソロを経て-
ヒップホップに寄せた前作。その後、ジェラルドのソロ作を挟んでのリリースとなった6th。ジェラルドのソロでは、グループとは違う方向性=伝統的なR&Bを届けてくれたわけだが、本作はグループとしての前作『Rope A Dope Style』の延長線上にある作品になっている。
今回も外部からの招聘ははく、全てをメンバーとエドウィン・ニコラス(Edwin Nicholas)がプロデュース。他のアーティストへのプロデュースを行っているメンバーを考えると、当然のことと言わんばかりであるが、それだけ自信をもっているのだろう。
-ヒップホップ・ソウルへの対応-
冒頭の①「Me 'N' You」こそニュー・ジャック・スウィングのリズムでありながら、ループと中盤のラップを見せ、②「Clap Your Hands」③「Tribute Song」は完全にヒップホップの様相。ここまで聴くと、前作と同様に筆者としては辛い。①にはブリック(Brick)「Dazz」が、②③にはジェームス・ブラウン(James Brown)が、⑥にはスライ(Sly & The Family Stone)がサンプリングネタとして使われ…と明らかにヒップホップを前面に出した仕様である。
先行シングルとなった④「Good Ol' Days」は、ヒップホップソウルの体で、どこかに憂いを感じる様は、まさにメアリー・Jブライジ(Mary J.Blige)「Real Love」の方法論。全体を支配するループトラックは、どこからかのサンプリングかと思うほど印象に残る。93年2月というタイミングで、このトラックをシングルにするというのは、マーケットを大きく意識しており、POP78位を記録した。その雰囲気を保ったまま、⑤「She's All That(I've Been Looking For)」⑥「For Real Tho' 」と成熟したニュージャックが続く。
-後半は落ち着いて-
ようやく迎えるスロウ群は、雨のSEから始まるタイトルもズバリ⑦「Quiet Storm」。その後は秀逸な楽曲が続く。得意のいわゆるニュージャックスロウといえる⑧「Do The Thangs」は、後半から歌い出すジェラルドのバリトンが炸裂。これぞソウルを感じる魂の叫びを堪能できる。⑨「My Place (Your Place)」⑩「Say You Will」も同様の作風。どちらもファルセットとバリトンの掛け合いが、派手さは無くとも印象に残る。
そしてトリを飾るのは三連バラードの⑪「ABC-123」。シングルカットされたこの楽曲は、わかりやすいメロディと歌詞で、POPチャート46位と、④よりも支持された。やはり、リヴァートにはこちらのほうの音を求められていたということではないだろうか。
-筆者の問題もありながら-
前作同様に、筆者の偏った耳のせいで、どうしてもスロウを推してしまう。変わりゆくものへの対応のなさとも言えるだろう。しかし、良い物は変わらずとも良いわけで、それをアップデートしていくことが大切であろう。聴く耳のなさに反省しつつ、良い物は良いと言い続けたいと思う。
(2022.02.05)