1. 『'Tli The Morning』
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『'Tli The Morning』(2011)2011
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Review

-自信に満ちあふれる-

2002年作の『Rebirth』から次作『Just Me』のリリースまで6年。録音をしながらもお蔵入りした作品が2作あるとはいえ、最長のインターバルだった。しかし、『Just Me』から『Ridin' Solo』、そしてこの『'Til The Morning』までは3年という短期間での発表となった。ここまでワーカホリックとなったのは、やはり自分自身の原点に立ち返り、それが受け入れられ、自信を、自身を取り戻したからだろう。短期間での制作となったであろう本作であろうが、決してそれを感じさせない安定のクオリティを今回も届けてくれた。
 出だしのタイトル①「Candy Store」からして、まさしくキースワールド全開[*1]。もう期待しかない。

-アンジェロ・レモンの活躍-

制作陣は、前作とほぼ同じ。ただし、比重としてアンジェロ・レモン(Angelo Remo'n Durham)[EX/Renaizzance]プロデュース作品が増えている。

そのアンジェロがプロデュースした楽曲で、どうしても一番最初に目に入ってくるトピックといえば、②「Knew It All Along」である。LSGの復活である。2006年に鬼籍に入ったジェラルド(Gerald Levert)の声が聞こえるだけでもたまらない。楽曲はオーソドックスなスロウで、メロディアスな王道バラード。3人の声のケミストリーを感じるには最適なフォーマットではないだろうか。“ウタ”そのものを愉しめる。

また、SWVココ(Coko)を迎えた⑪「My Valentine」は、歌いすぎないココの立ち回りと、SWV出身の彼女に合わせたようなわかりやすいメロディラインが好印象。“キース×女声”という黄金の計算式を用いている訳だが、そこにエロさは皆無。しかし、ココのキャラクターを考えると、これが正解だったと思わせてくれる。

アンジェロは他にも、遠慮気味の泣きのギターから入る③「High As The Sun」、先行シングルだったいかにもキースらしいスロウである⑤「Make You Say Ooh」、アルバムタイトルとなった楽曲である⑧「'Til The Morning」、アコースティックな音と打ち込みがうまく溶け合っている⑨「Open Invitation」を手がけている。なかでものセカンドヴァースの音の減らし方が、切なさが濃縮されて出てきたようで心を持っていかれる。このあたりは、アンジェロが在籍していたルネッサンス(Renaizzance)で培ったものと思われる。

-気心の知れた仲間たち-

スティーヴ・ラッセル[*2](Steve Russell)が担当したのは、ベタ凪のアルバムではあるものの、雰囲気を壊さないミディアムの④「Lady Dejour」とふたウチリズムがクセになる⑦「Ring Size」。どちらも地味ではあるものの、彼らしい黒い深みのある楽曲になっている。
 その他は、プラチナム・ブラザーズ(Platinum Brothers)⑩「One On One」を担当。サビにコーラスを丁寧に重ねて、まるで割れ物のように仕上げたスロウ。また、ゲスト参加のT-ペイン(T-Pain)が手がけた⑥「To The Middle」は、その融合が非常に心配だったが、派手にオートチューンばかりというわけではなく、きちんとキースの作品用に落とし込んでいて、筆者の考えが杞憂に終わった。そして、エンジニアのアダム・レジスター(Adam Ledgister)が、今回もプロデューサーとして参加し、⑫「Getaway」をキースと共作している。

-続けるということの難しさ-

R&Bは8位が最高位となったこの作品。「チャレンジ感が無い」などという意見もあるわけだが、それはキースを聴き続けていない証拠。チャートにこだわらずにこういった作品を作り続けられると言うこと自体がレジェンドなのである。

(2021.09.18)

[*1]SEで少しだけキャーキャーいっている声が聞こえるのだが、これは女性ってことで理解しようとしている。それがキースワールドだと思うからだが、聴けば聴くほど子どもたちが遊んでる声に聞こえてしまうのは筆者だけだろうか。。。
[*2]いろいろな作品で“スティーヴ(Steve)”の標記と“スティーヴン(Steven)”の標記があるのですが、これは時期的な問題なのでしょうか。いつもわからなくなってしまいます。

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