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『Ridin' Solo』(2010)2010
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Review

-個人的には前作を凌駕-

前作『Just Me』での帰還は、筆者も諸手を挙げて喜んだのだが、それは誰しも同じだったようである。なにより商業的成功がその証拠と言える。やはりキースに望まれているものが、時流にのるのではなく、ながく聴き続けられるものということがはっきりした。
 そのような背景から、今回も当然のキープ・コンセプト。個人的には前作を凌駕していると思っている。

-移籍-

前作でエレクトラ(Elektra)を離れてライノ(Rhino)へ移籍。ところが、今回も移籍している。その立役者がキダー・マッセンバーグ(Kedar Massenburg)[*1]である。本作リリースの前年にキダー・エンタテインメントからリリースされたのが、のちに名盤と語られるジョー(Joe)の『Signature』。アーティストの立場を組んだ全編書き下ろしのバラ―ド・アルバムなのだが、セールスを気にしていたら、こんな構成はできなかったであろう。そんな彼の元からキースの作品がリリースされるとなると、抑えても期待が膨らんでしまう。

-ハイライト-

そのジョーとの③「Test Drive」がリリース前の話題に。セールス的にはR&Bチャート58位と、二人にしては成功とは言えないのだが、楽曲[*2]のクオリティは充分!歌い出しからジョーの哀愁のある歌声で「君に試しに乗ってみたいよ」という直球。それを受けてのキースの粘着度満点の歌声が入り、二人が合わないはずもない訳だが、改めてこの融合に酔いしれる。手がけたのはプラチナム・ブラザーズ(Platinum brothers)というアダム・ギブス(Adam Gibbs)マイク・チェッサー(Mike Chesser)の2人によるユニット。チャーリー・ウィルソン(Charie Wilson)との仕事などで名を挙げているだけのことはあるとうなずいてしまう。
 それに続く④「Ridin' Solo」⑤「Genius Girl」の2曲も秀逸。独りはもううんざりと歌ってしまうは、アンジェロ・レモン(Angelo Remo'n Durham)[EX/Renaizzanceによるもの。“ボビー・ウ-マック(Bobby Womack)の「If You Think You're Lonely Now」がラジオから流れる”という部分は、オハイオ出身のアンジェロらしい言い回しである。
 は、前作にも参加していたワーリー・モリス(Wirlie Morris)が手がける。メロディがわかりやすいのにエロさがぐっと伝わるという、キースらしさを前面にだした楽曲である。ワーリーは、他にも①「Famous」②「Full Time Lover」⑧「It's All About You」⑩「Live In Person」⑫「Tropical」とアルバムのおおよそ半分に関与し、大活躍。アップデートされた、最近の音を提供してくれている。

-R&Bファンは強く反応!-

90's R&Bファンが注目するのは⑥「Do Wrong Tonight」だろう。キッパー・ジョーンズ(Kipper Jones)スティーヴン・ラッセル(Steven Russell)の共作という、トゥループ(Troop)「Spread My Wings」でのタッグが実現している。ここでは、「Spread My Wings」のようなポップな色はなく、重たいスロウ。キッパーらしさという意味では気迫だが、アンダードックス(Underdoggs)で活躍してからのスティーヴの得意とするパターンになっている。コーラスにタンク(Durrell “Tank” Babbs)が参加しているのだが、彼の色も感じられる聴き応えのある1曲である。

-自分の仲間たちにチャンスを与える-

個人的なお気に入りは、ブギーながらもソウルを充分に感じられる⑨「I'm The One You Want」サーフェス(Surface)「Happy」は様々な楽曲でサンプリングされているわけだが、ここでも抜群の相性を見せてくれた。お得意の女声コーラスをふんだんにちりばめ、スムーズなミディアムに仕上げてくれている。この楽曲はキースのバンドに在籍するアダム・レジスター(Adam Ledgister)によるもの。キースが常に自身の身近な人材を用いるところに男気を感じる訳だが、それが全て義理だけで採用しているわけでは無く、多くで核となる楽曲を手がけていることが素晴らしい。

-最後は熱く、厚く終わっても…-

⑪「It's A Shame」は重ためのスロウで、後半のブリッジの部分“Listen To Me”で珍しく吠える部分を見せ、その熱さを伝えてくれた。ここで終わり…と思ったら最後にレゲエ調のが…。楽曲は悪くないが、これはアルバムに収めなくても良かったのではないだろうか。また、ボーナス・トラックの⑬「I Hurt An Angel」R.ケリー(R.Kelly)の「I Believe I Can Fly」的なバラード。これも要らなかったような…。

(2021.09.04)

[*1]ディアンジェロ(D'Angelo)をはじめ、エリカ・バドゥ(Erykah Badu)らを世に広め、のちにモータウン(Motown)の社長[1997-2005]に就任。
[*2]PVはカッコイイ部分も多いのだが、やはり車屋に行ってクルマと一緒にクルクル廻っているのはどうにも…。

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