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『Music @ The Speed Of Life』(2012)2012
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Review

-筆者の素地-

筆者が洋楽を聴くようになって、初めてアーティストとして好きになったのはボビー・コールドウェル(Bobby Caldwell)だった。以来、AORというジャンルを聴いていくため、純粋にブラックミュージックばかりを聴いていたのではない。そんな自分だから、どこかロックよりな窓口は広いつもりでいた。
 しかし、ミントの前作『7』を聴いたときに、自身の守備範囲の狭さに驚愕した。そして、どこかミントが本当にやりたいことは、もっともっとバンドサウンドなんだろうなと思わされていた。事実、そうなのかもしれない。セルフコンテインドバンドである彼らが演奏に注力するのは当然のことで、結果としてロックよりにベクトルが向くこともあるだろう。
 そんな気持ちのまま、ミントにしてはインターバルの早いリリース、かつ、タイトルに「スピード」という言葉が入っていることから、正直あまり期待せずに聴き始めた。

-耳が大きく反応したシングル曲-

①「In The Moment」は、前作同様の雰囲気…。決して悪いわけでは無いけど、これじゃないな…と思っているところで耳に入ってきたのは②「Believe In Us」。まさしくミント印のポップなミディアム、そしてトークボックスが甘く入ってくる…。この1曲で一気に聴き耳を立てた。このトークボックスを操っているのは、ジャム&ルイス(Jimmy Jam & Terry Lewis)一派であるボビー・ロス・アビラ(Bobby Ross Avila)である。結成時からミントを知る一員なわけで、その親和性が悪いはずもない。シングルとして先行リリースされたこの曲は、R&Bチャートで71位を記録している。
 また、この曲のミュージックビデオをみると、やはり彼らがハーモニーを大切にしていることがうかがえる。曲の前半は、まるでコーラスグループかのように5人が楽器なしで歌い、祈りのポーズをとる。そして後半にそれぞれが楽器を持ち、バンドを意識させる。こんなことができるのは、彼らならではである。 
 続く③「What I Gotta Do」も甘めのスロウで、この2曲を聴いただけで、前作を凌駕していることを確信した。

-安心できる部分-

他にも“らしさ”は随所に登場。ストークリー(Stokley)の声にしっくりはまる初期のミントのようなスロウの⑧「Completely」、ライブではホーンセクションがもっとふんだんに使われそうなピースフルな雰囲気の⑩「Nothin'」、電子音と生音のバランスが絶妙な、ミント流ファンクといえそうな⑪「Be Where You Are」など、筆者のような頭の固いファンにも喜ばれそうな楽曲がそろっている。

-ヒップホップとジャズと-

今作で話題になっていたのは、DJジャジー・ジェフ(DJ Jazzy Jeff)[*1]が参加した⑥「Girl Of My Life」であった。ジャジーな雰囲気に、独特なリズム感…ともすればズレているのかというような危ういビートに、スクラッチがブレンドされていて、ミントらしさはないものの、仕上がりは抜群にカッコイイ。
 同様な雰囲気の⑤「Slo Woman」も、ストークリーのスティールパンが入りながらも、明るい方向へのアプローチにならず、クールに整えられているところが面白い。
 これら2曲は、3rd『Definition Of A Band』収録の「I Want It Again」で見せていたわけだが、こういった方向性は大歓迎である。

-みんなが待っているのは-

本作は、先行シングルとなったの評判がかなり良かったので、前倒しでリリースされたという。また、Spotifyの再生回数も(本作のなかでは)ダントツである。やはりミントファンが待っているのは、ストークリーの甘い声を充分に活かしきったミディアムなのではないだろうか。

(2022.04.02)

[*1]ウィル・スミス(Will Smith)とやっていた頃(DJ Jazzy Jeff & Fresh Prince)も、主にジェフがトラック制作をやっていて、ウィルがラップをしていた。いろいろと叩かれたようだが、彼がつくるトラックは昔からわかりやすかった気がする。

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