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『Definition Of A Band』(1996)1996
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Review

-商業的にも成功-

ニュー・クラシック・ソウルという生音にアプローチしたムーブメントが時流となっていた96年にリリースされた3rdアルバムは、タイトルもズバリ『バンドの意義』ときた。言い切るということは、それだけ自信があるはずであり、結果、商業的にも大成功し、彼ら最大のヒット作となった。アルバムは、ゴールドの認定を受けている。
 個人的には1st、2ndよりも地味なイメージがあり、正直これが最大のヒット作と言われると、意外な気がしてならない。往々にして、作品の質は高いのに、セールスに結びつかないのがブラックミュージックなのかと思ってしまっている節があるのだが、上記のムーブメントにのって売れたのだろうと推察する。しかし、彼ら的にはそれに乗っかったというわけではなく、生音重視・演奏重視の彼らがやりたかったことを変わらず実践したということに過ぎないだろう。

-いままでの経緯を考えたシングル-

今回のシングルはスロウが選択された。先行シングルは大体派手目なトラックが選ばれるものだろうが、今までのミントの傾向を考えれば当然と言える。その⑤「What Kind Of Man Would I Be?」は、これまでのミントに期待している聴き手の期待に大きく応えたセンチメンタルな楽曲。優しいメロディーのなかに、前作収録の「So Fine」同様、ブリッジの部分でオデール(O'dell)が狂ったようにギターを弾き倒すところにソウルを感じることができる。シングルはPOPチャートで17位、R&Bチャートでは2位を記録し、60万枚のセールスを記録している。
 また、セカンドシングルになったのもスロウの③「You Don't Have To Hurt No More」。たたみかけるような戦略で、こちらもPOP32位、R&B10位を記録している。
 上記の流れもあり、本作も当然スロウが充実している。もしも次にシングルカットされるものがあれば選ばれていたであろう、ファンの間では人気の⑪「On & On」や、続く湿度高めの⑫「The Never That You'll Never Know」、音数を控えたグルーヴで、ささやくように歌うストークリーと、メンバーのコーラスのキャッチボールが心地よい④「Gettin' It On」など、横揺れしたくなる秀作がそろっている。
 その中でも、ミディアムのブギーともいえる⑥「Let Me Be The One」に惹かれる。後ろで着実に弾くギターのカッティングと単純なベースラインでありながらも存在感のあるベース、そしてブリッジに入るサックスと、どれもありがちなものでありながら、きちんとアップデートされているような音作りがたまらない。

-守備範囲の広さ-

以上、スロウを中心に紹介してきたが、もちろんそれだけではない。完全にザップ(Zapp)なファンク、⑨「Funky Weekend」には、ロジャー(Roger Troutman)の息子、リル・ロジャー(Lil' Roger Lynch)がトークボックスで参加しており、寄せているというより、もはや敬意のアルものまねと言える。また、妖しげな雰囲気の⑩「I Want It Again」のジャズ的な要素は、ディアンジェロ(D'Angelo)がやりそうな重めのミディアム。これはライヴで再現されたものを聴いてみたいと思わせてくれる。
 また、本作ではところどころにインタールードが配置されているわけだが、ジャジーな要素からスティールパンの音色、ボサノヴァ風味など、ミントの幅広い音楽性がうかがえる。

-背景にあるもの-

それにしても、こんなにレコード会社がスロウを重視してくれていたという時代は少ない。商売と考えれば当然といえるのだが…。そこを可能にしてくれたニュー・クラシック・ソウル。ブラック・ミュージックにとって、この功績は大きい。

(2022.03.05)

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