－優等生－

繊細な歌声をもつシンガーだ。発売当初、様々な読み物でメロウ～スロウにまとめられた作品とあったので、“これはお行儀の良い作品なのだろう。多少つまらない内容なのだろうか!?”と思ったものだ。しかしながら、ハズレはないはずと思って購入。ジャケットの作りは安っぽいんだが、これはご愛嬌。予想に反して全体的にソウルを感じ取れる一枚だ。

－メロディ重視派－

まずはシングルとなったアルバムタイトル曲の①「Good Thang」だ。これはタンク(Tank)との競作で、湿度の高いバラード。タンクはあれだけマッチョなのに、こんな繊細な曲を書くなんて、と思わせてくれる代表格といえるのではないだろうか。それにしても彼らしいメロディラインだ。

続く②「One Night」は、マックスウェル(Maxwell)のセカンドを彷彿とさせてくれる、ギターの音色が印象的なミディアム。全体的にこのリフが危険な香りをかもし出してくれている。こんな雰囲気を出しての、③「Slow It Down」は、イッキにベットサイドへ。ベイビーフェイス(Babyface)がらみで、長きに渡ってかかわってきた、ボーイズⅡメン(Boyz Ⅱ Men)のショーン・ストックマン(Shawn Stockman)が参加している。

－白眉のスロウ－

そしてこのアルバム中、出色の出来が、⑤「Wasn't That Type」だ。なんと優しい曲なのだろう。ピアノと打ち込みの絶妙なバランス、そしてまさに“Sing Like Talking＝語るように歌う”とも言える、丁寧なヴォーカルが心を捉えて離さない。同様の世界観をもっている⑦「No Matter What」は、弟ジェイ(J.Valentine)が参加。これもキレイな仕上がりだ。

－あの作品に酷似!?－

繊細なミディアムが続いたあとの、ダウン・ロウな⑬「Imagine You and Me」。重たい雰囲気にファルセットが絡み合い、ソウルを吐露している。その落ち込んだ空気を感じた後の⑭「Sticky Situation」が、妙に励ましてくれているように感じる…。

そして正統派⑯「When Some Body Really Loves You」のバラードで聴かせ、アウトロ的な⑰「Little Things」で幕引き。このあたりがどうしてもマックスウェルの『Urban Hang Suite』と似てると思ってしまう。でもこのフィーリング、大好きです。

－方向性－

ミディアムに秀作が揃って、アルバム1枚を安心して聴ける。冒険してないと言われるかもしれないが、この方向性を突き詰めていって欲しいと思っている。

(2006.11.13)