1. 『Tomorrow 2 Yesterday』
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『Tomorrow 2 Yesterday』(1998)1998
rated r 『tomorrow 2 yesterday』

Review

-西崎さんへの感謝-

このところ90年代の、いわゆる“お宝盤”のリイシューが続いている。レ・ジット(Le Jit)『Le Jit』アヴェレージ・ガイズ(Average Guyz)『First Come First Served』、G-インカーナ(G-Incarna)『G-Incarna』などなど…。ヤフオクでも高値で取引されていたものばかりで、到底筆者には手に入れることができない作品だった。

これらのリイシューに尽力されたのが西崎信太郎氏。その活動にはいつも脱帽させられてしまう。「R&Bを日本に根付かせる」という信念が大袈裟ではなく、実行しているところに驚かされる。

その活動により、本作品もめでたく再発。オハイオ州コロンバス出身という情報のみで購入した2nd『Love & Life』を聴いたときから、この1stを聴きたくて仕方なかったのだが、ようやくここに聴くことが許されたのである。

-期待通りのスロウジャムの世界-

電話のSEから始まる①「Rated R Jam」が始まると、期待していた基準をさらに超えてくれることの予測ができた。ループする妖艶な電子音に絡まるコーラス、トークボックス(ボコーダー!?)の軽い味付け。R.ケリー(R.Kelly)の「Bumpin’ Grind」を彷彿させるミディアム・スロウは、やや哀愁のあるところがたまらない。

その雰囲気を保ちながら、3rdシングルだった②「Natural Thang」へ。これも語りから入ると、さらに鍵盤の音が飾られる。三味線のような音が以外にも甘美な世界観を高揚させてくれる。

-甘美な雰囲気は続く-

同様の世界観は③「Game “Talk 2 U”」も引き続き。2ndシングルの④「4 Steps (In My Room)」はタイトル通り“1”からカウントダウン。誠実そうなテナーのコーラス・ワークが紳士を演じている。続く⑤「My Child」のイントロに官能の世界には禁断の赤ちゃんの声が入っているのだが、あくまでベイビー・メイキン・ミュージックというような使われ方なのでご安心を。流れが崩れることはない。

ハイライトと言えそうな⑥「Roses」は三連系。テナーのJTの声が印象的な楽曲である。メロディを聴くと、スティーヴィー(Stevie Wonder)からの影響がにじみ出ていることがよくわかる。また、後半にアーニー(Ernie Isley)のようなギターが主張せずに泣き始めるところに、オハイオ愛を感じる。

タイトル曲である⑦「Tomorrow 2 Yesterday」は唯一の外部提供曲。とはいえ、JTの旧グループ[1]の仲間が作っているものということ。分かりやすいメロディーは日本人が好みそうなスロウである。

-後半はヒップに寄せる-

⑧「Twisted」[2]からは一転、後半戦のスタート。ここからは、ヒップホップに寄せた作品が多い。特に話題となるのが⑬「Rac Ryda 2」のトゥイスタ(Twista)の参加ということになるだろう。個人的には⑪「I Won't Tell」の鍵盤音のリフが頭から離れない。これくらいメロウなら、ヒップホップが苦手の筆者でも受け入れられるのではないだろうか。こういったストリート臭があるからこそ、コーラスが活きてくることは自明である。

(2017.03.25)

 

[1]14歳で結成したフレッシェスト・コンビネーション(The Freshest Combination)は、アマチュアのコンテストにも出場し、コロンバス周辺では有名だった様子。⑧「Tomorrow 2 Yesterday」の作曲は、そのグループに在籍していたエリック・ウィティカー(Eric Whittaker)。
[2]羊先生の楽曲とは同名異曲。カヴァーかと期待したのだが…。

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