-時代背景には当てはまらず-
1997年発表。今よりもインディ・ソウルが入手しづらかった時代。そんな中でリリースされ、日本で再発までされたレ・ジット(Le Jit)の1stである。
97年というと、ニュークラシック・ソウルがひと段落つき、ティンバランドが政権をとる少し前…。そんな背景にこの濃密な作品。だからインディでのリリースになったのだろうが、いやいやタイムレスな作品になっている。
-前戯-
オープニングのざわついたSEが期待を膨らませてくれるダンスナンバー①「Say What You Want」。ギターのリフが印象的だ。その次には、怪しげなスロウ②「Sexy Ways」。レ・ジットらしい妖艶なミディアムだ。③「Alizae」とのブリッジに、「What's Goin' On」「Between The Sheets」でつなぐのは、古いソウルへのオマージュだろう。
作品の後半、ディープな世界に入る前に、爽やかミディアム⑥「Summer Love」。カット・クロース(Kut Klose)「Lovely Thang」を思わせるメロディラインが心地良い。それにのせるコーラスワークが肉厚なのだが、それが脂っこくなく、しっくりくるところが意外である。
-大人の時間へ-
⑦「Sounds Of Love」からは大人の時間へ。海辺のモーテル?からスタートな、7分を超える大作だ。“Baby・・・Make Love・・・”そんな甘美な世界が広がる。シンプルなピアノの音をバックに波とカモメ鳴き声・・・。そのまま⑧「Silky Sheets」へ。筆者の大好物である階段式(だんだんと昇っていくような雰囲気のある)バラードだ。ちなみにこの曲は、彼らの2ndでももう一度収録されている。それだけ本人たちも大切な1曲になっているのだろう。セクシー路線は⑨「Sexual Explosion」まで続く。
そして優等生バラードの⑩「Waiting For Your Love」 へ。この手の曲調は、ともすればつまらなくなりがちなのだが、その心配は無用。それは彼らの“ウタヂカラ”によるところが大きいように思う。とにかくゆっくりと楽しみたい。そのウタゴコロを更に証明するのが、レニー・ウィリアムス(Lenny Williams)のカヴァ⑪「Cause I Love You」。“ahh,ahh,ahh~uh・・・”と自慢の喉を披露してくれる。
-少しずつ安価になりつつあるような…-
BMR誌1998年1月号、石島春美さんの1997年年間ベストを見て欲しい。アーティスト順に作品を並べつつも、No.1にしっかりとこの作品を選んでいる。さすが春美さんである。
ちなみに筆者はディスクユニオンで\3,780で購入。入荷してすぐだったと聞くので、本当に運があったと思っている。定価以上でも購入したくなる内容であることに間違いはない。
(2010.03.01)