-知らなかったファンク・トリオ-
現在は閉鎖されてしまったが、“yoyo-jukebox”というR&Bを紹介するWebサイトがあった。当サイトを開設するにあたり、リンクの許可がどうしてももらいたく、ご本人からご了承をいただいた唯一のサイトであった。そこで紹介されていたのがこの作品である。
当時の私は、シャバズ(Shabazz)の存在すら知らず、「誰?」という状態であったわけだが、この作品に対してのYOYOさんの解説を読む限り間違いなく気に入るだろうと思ったことを思い出す。そして、その予感は当然のようにピタリと当たった。
-軽く効いたスチーム=心地よい-
歌い倒すわけでもなく、ナヨ声で甘えるわけでもない。それでいて湿度が高く心地よい。オマリの歌声はそんなウェットな印象である。そんなスチームのきいた声にしっくりはまる、スロウ中心の作品となっている。
歌いだしの①「Get My Groove On」から、最小限に編まれた音の隙間を湿度で埋めるようなスロウ。歌声を足しすぎてびしょびしょにしない程度のちょうどよさがうれしい。
その雰囲気のまま②「Fall In Love Again」へ。そこに緊張感はなく、リラックスできる大人の夜が演出されている。ミディアムの③「Always On My Mind」では、やさしさの中にも、中間のキメ台詞“Always On My Mind… ”がシッカリと決まり、真の強さを示すダンディズム…。こういう男性ってモテるんだろうな…と思ってしまう。
イントロのギターやリズムから、オーティス&シュグ(Otis & Shugg)の「My First Mistake」(『We Can Do Whatever』に収録)を思い出させてくれた⑤「Tell Me You Love Me」も秀逸。ここまでがこの作品のハイライトだと個人的には考えている。
-昔からのファンを喜ばせる-
中盤~後半には、グループの頃からのファンも喜ぶであろうグルーヴ間のある楽曲も収録。セルフ・カヴァーの⑱「Glad You're In My Life」[1]は、アップデートされてはいるものの、80年代の雰囲気をしっかりと残している。
また、⑪「Will You Be There」は、聴いた瞬間にメイズ(Maze featuring Frankie Beverly)の「Before I Let You Go」だと思ってしまうのは筆者だけではないはず。このあたりもオールド・ファンはニヤニヤしてしまうところだろう。最後には、フランキーのコールのような“アッ、アッ、アッ、アッ… ”って言いながら終わっていく。これは確信犯でしかない…。
-ヒトコトだけ言わせてもらえるなら-
MACS & RUMPLESTILTSKIN/『I Miss You』のトコロでも書いたのだが、どうして急に違う雰囲気の1曲を持ってくるの!と思ってしまうのが⑯「Peace To All」。前曲⑮「Come Together」、後曲⑰「Father I'm Coming Home」がしっとりと歌う楽曲の間、急にUKソウルが混在。いや、楽曲単位だと嫌いではないのだが…。ボーナストラックととらえたほうが良いのだろうか。UKで作られた作品だから意識したのかはわからないが、個人的には外してほしかったと思う。
(2019.12.08)
[1]CDには収録。この作品は“Spotify”にも登録があり、聴くことが可能なのだが、⑱だけは未収録。こういった作品をネットで聴ける時代になったと改めて感じている(いい意味でも悪い意味でも)。