-激 動-
前作ではエレクトラ(Elektra)へ移籍し、心機一転を図り、それから作品をリリースしつづけるのかと思っていたが、1作のみでエレクトラとの関係は解消。自らのレーベル" ケイジド・バード(Caged Bird Records)" を立ち上げ、インディに籍を置くことになった。その第1弾が本作である。
結成から変わらない6人のメンバーで活動してきたミントだったが、2001年頃に、ケリ・ルイス(Keri Lewis)が妻であるトニ・ブラクストン(Toni Braxton)のプロデュースに専念するために離脱[*1]。前作から6年のインターバルというのは、こういったことが理由になるだろう。
-ミント・ファンを裏切らない-
今回は、前半にミディアム~スロウを並べた。シングルとなった④「Whoaa」は、ミント印のミディアムで、6年ぶりの作品を心待ちにしていたファンの期待に大きく応えている。もう1枚のシングルは、オデール(Homer O’Dell )による、アーニー・アイズレー(Ernie Isley)のようなノビのあるギターが印象的な渋めのスロウ。メンバーが奏でる生音が、一つひとつを少しずつ遅らせて奏でるような印象で、粘着質が高めに仕上がっている。一度はまると抜け出せなくなるように、何度も繰り返し聴きたくなってしまう。
また、前作収録の「If You Love Me」の方法論そのままの⑥「Love You Tears」や、ざらっとした音作りも生音にこだわった証拠と言えそうなスロウである⑨「Half An Hour」など、いつも通りの充実のミディアム~スロウ群にホッとさせられる。
上記の楽曲でも充分往年のファンの期待に応えてくれているのだが、これらの前に配置された③「Look Whachu Done 2 Me」が、最も彼ららしい。次作『E-Life』に収録された「Nothing Left to Say」へとつながる、まさしくメイド・イン・ミントといえるかわいい楽曲を届けてくれた。ストークリー(Stokley Williams)がスティール・パンを扱う曲は多数あるのだが、ここまで全面的に使っているのは初めてではないだろうか。これにのる彼の歌声は、ほかに代えるものがないといえるほど溶け合っている。いずれにしても、この曲が嫌いなミント・ファンはいないだろう。
-微妙な後半-
しかし、⑩「It's Hard」以降は、ロックに接近。いつも最後の曲がロッキッシュになるのはお約束だと思っているが、今回はウェイトが大きい。もちろんそれだけではないのだが、後半は正直苦手である。
アルバムというものは、何度も何度も聴き直して、だんだんと良くなっていくもの。前作『Life's Aquarium』も、良さがわかるまでに時間がかかった。きっとまだ聴き足りないんだろうなとそう感じているわけだが、果たして...。
-輸入盤(初回)にはDVDが-
ちなみに輸入盤の初回プレス分と思われるが、DVDがついている。2004年のライヴが30分ほど収録されているのだが、これは良かった!以外だったのは、前作でスロウだった「Call Me」をアップでやっていてカッコよく仕上げている。お約束の「Breakin' My Heart」は、ストークリーが大きくアレンジして歌っているが、これは同曲をたくさん聴いてきた人にはたまらない。ストークリーが最後歌うのを一瞬とめるところなど、思わず笑ってしまった。
いずれにしても、この作品を買うならDVD付きをおすすめしたい。
(2022.03.14)
[*1]脱退は他のメンバーとも前向きに合意しており、ライブなどではゲストとしても参加しているようである。後にケリはトニと離婚してしまうので、脱退しなくてもなぁと考えてしまう。