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『Life's Aquarium』(1999)1999
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Review

-エレクトラへ移籍-

商業的に大成功した前作を受けての4th。通常ヒット作直後の、次作品へのインターバルというのは短いはずなのだが、実に3年ぶりのリリースとなった。これには理由がある。前作の時点でジャム&ルイス(Jimmy Jam & Terry Lewis)パースペクティヴ(Perspective Records)から手を引くことになったことを受け、ミントも離れることになったのである。新しいレコード会社はエレクトラ(Elektra)キース・スウェット(Keith Sweat)を筆頭に考えると、ミントのやりたいことを叶えてくれそうな選択[*1]だったのではないだろうか。

-リスタートは切なすぎるスロウから-

今回もシングルはスロウの⑤「If You Love Me」が選ばれた。寂しげな鍵盤から、一瞬盛り上がっていく雰囲気を出しながらも、結局切なすぎる曲調に戻っていくイントロに戸惑ってしまうのだが、ミントらしさを覗かせている。ストークリー(Stokley)が歌いすぎないように、語るように言葉を重ねている。POPチャート30位、R&Bチャートは5位と上場のリスタートとなった。

-異なる種類の声-

それ以上に話題になったのは、やはりアンクル・チャーリー(Charlie Wilson)が参加した③「Pretty Lady」になるだろう。ストークリーのハイトーンと、チャーリーの激シブバリトンの掛け合いというだけでも心が躍るのだが、さらに楽曲もミディアムというヴォーカルを楽しめるものとなっていることが嬉しい。2人の違うタイプの男性が、"イイオンナ" を口説いているような最後の掛け合いがキキドコロといえるだろう。タイトルを考えると、ミントの大ヒット曲「Breakin' My Heart(Pretty Blown Eyes)」の、かわいい女の子が、大人の女性になったという設定なのだろうか。そこに登場するのがチャーリーおじさんというところが、とてもエロくて最高である(誉め言葉)。

-ソウルファンがニヤつくところ-

上記同様にアダルトな雰囲気の⑦「Is This Pain Our Pleasure」はセカンドシングル。横揺れ感が満載、かつ、訳あり感たっぷりな歌詞と、どこか危うい感じでありながら、それが崩れないところが心地良い。"between the sheets"という詞が入ってくるところは、ついニヤついてしまうソウルファンは多いことだろうが、影響を受けたアーティストへのリスペクトを表現したものだろう。
 リスペクトといえば、ブラック・アーティストに絶大な人気といえる、ボビー・コールドウェル(Bobby Caldwell)[*2]「風のシルエット(What You Won't Do for Love)」をさらっと入れているあたりにも。ミントの守備範囲を考えれば、イージーフライといったところだろうか。

-筆者の想像を超越してくれたシンプルな楽曲-

その他、昔懐かしいWebへの接続音をサンプリングした⑧「Call Me」の妖し寂しい風情や、アコースティックギターの音色が優しいミディアムの⑨「This Day, This Minute, Right Now」など、ミントらしさを求める人にしっかりと応えている楽曲が多数。相変わらず、最後の楽曲はロッキッシュな⑫「Leave Me Alone」というのは、お約束なのだろう[*3]
 そんななかで、今回聴き直して際して"実に良い曲だなぁ"と改めて思ったのは、アコースティックギターとスナップというシンプルな構成に、ストークリーがファルセットでたたみかける⑩「Just The Man For You」。こういった楽曲がはいると、フォーキーになって、なんだかなぁと思ってしまうことが多いのだが、そこは自分の許容範囲の狭さ故のこと。しかし、その感覚を越えていってくれた。サビに入ってから、部分的にマイナーセブン系にうつるところがあり、その軽い転調に大きくやられた感じである。

-オリジナルメンバーでは最後の作品に-

この作品後、移籍したばかりのエレクトラを離れたり、これまでオリジナルメンバーの6人だったバンドから、ついにケリ・ルイス(Keri Lewis)が脱退したりと、ミントにとって激動の道が続いていく。いずれにしても、オリジナルの6人としては、最後の作品となってしまった。

(2022.03.12)

[*1]結局この作品1作だけで離れてしまった。キースと同じであれば、長く住むと思っていただけに意外だった。
[*2]洋楽を聴き始めた頃は、AORを好んで聴いていた。なかでもボビー・コールドウェルは一番最初に聴き込んだアーティストだった。
[*3]今回の⑫「Leave Me Alone」は、他の作品に収録のロッキッシュな作品よりも聴いた。シークレットトラックは…。

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