1. 『Honeyland』
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『Honeyland』(1996)1996
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Review

-世界観の完成-

前作にてアイズレーズ(The Isley Brothers)のカヴァ「Make Me Say It Again Girl」を披露し、今後の方向性を示していたわけだが、作品後半には過去の風味も残しており、昔からのファンもうなずけるものとなっていた。しかし、この4thではしっかりと振り切っており、メロウな世界観が完成されている。全編をミディアム~スロウに統一されており、この作風が大好物である筆者にはたまらない1枚になっている。

-オマージュもわかりやすく-

冒頭に記述したとおり、そのアイズレー趣味は本作でも当然継続。スロウの⑤「Heaven's Missing An Angel」など、思いっきり「Summer Breeze」。そして歌い出しは、R.ケリー(R.Kelly)よろしくダウンロウ的に始まる。思いっきりのオマージュなわけだが、同様に⑨「Everlasting Love」も「Don't Say Goodnight」やクリス・ジャスパー(Chris Jasper)な味付けとなっており、ここまできたら、前作同様カヴァーをやっても良いのではないかと思わせてくれるレヴェルである。ちなみに隠し味にマーヴィン(Marvin Gaye)の「I Want You」が施されており、よりメロウな食感になっている。⑪「Still N Luv」も完全にアイズレー・ジャスパー・アイズレー(Isley Jasper Isley)の「Caravan Of Love」の方法論であるわけだが、これら3曲が次作である傑作『Melodic Massage』に再収録されていることを考えると、ミキのやりたかった音楽はコレだ!と確定できるのではないだろうか。

-アイズレーだけではなく-

アイズレーズ以外に取り入れているのは、クール&ザ・ギャング(Kool & The Gang)の、個人的には彼らの最高傑作である「Summer Madness」のギターのリフを取り入れた④「U Should Be With Me」。あのリフがこの世界観にハマらないはずもなく、どことなく妖艶な雰囲気が醸し出されている。

また、今作での進化といえば③「No More Tears」のようなヴォーカルに比重を置いた三連系スロウを歌っていることだろう。96年という時代背景を考えると、是非LSGにパート分けして歌ってもらいたかったと思うのは筆者だけではないだろう。ジェラルド(Gerald Levert)の吠えるパートが目に浮かぶような楽曲で、ミキのつくるメロディの素晴らしさが浮き彫りになっている。

-これがホントの捨て曲なし-

そのほうも安定して、どれも甲乙つけがたい楽曲が詰め込まれている。作品の冒頭を飾る①「Honeyland」は、ねっとりとした湿度高めのスロウ、安定した跳ねるようなベースラインが印象的な②「Stay」、白っぽいメロディでありながらも、決してがっかりさせない⑥「I Cry For You」、唯一といえるアップよりのミディアムの⑦「She's Got It Like That」アトランティック・スター(Atlantic Starr)のカヴァである⑧「Send For Me」は、本家よりもエロく施し、⑩「Deeper」は、打ち込みの音が展開されても安っぽくならず、サビの女性のようなコーラスが心地よいなど、どこから切り取っても隙が無く作られている。

-賛否両論あって当たり前だが-

これだけ起伏が少ないと、好き嫌いが分かれても仕方ないかもしれない。しかし、この統一された時間が愛おしくてたまらない。前出の次作に負けない傑作と断言できる。

(2022.07.09)

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