1. 『Devoted』
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『Devoted』(2001)2001
margi_coleman

Review

-Soul Diggerチャート1位!-

『bmr』誌の石島春美先生のSoul Diggerチャートを制している[*1]という、この情報のみで、もう以下の記事は入らないのかもしれない。信頼のこのチャートを制しているわけだから、まず間違いなしと言える。 さらにプロデュースしているのは、マイケル・J・パウエル(Michael J Powell)。もう、盤石の体制の1枚。それがこの作品である。

-ギターを活かした憂い感-

アルバムに先立ってリリースされたのは②「Say You Will」。もともとギタリストであるマイケルの得意とするアコースティック感高めの、切ない系スロウ。マリオ・ワイナンズ(Mario Winans)1stに通じるこの憂い感は、マイケルがゲス(Guesss)タイリース(Tyrese)でも表現してきた訳だが、ギターのコードの握り直しの音まで含めて完璧な造形美である。
 のちにシングルカットされたのも、完全に同じ路線の④「Hatin' On Us」。商業的には厳しかったのかもしれないが、2曲ともいつの時代にも聴ける作品であることは間違いない。

-久保田さん、参加してます!?-

驚くほど久保田利伸感が半端ないのが2曲も存在する。それが⑤「So Beautiful」⑧「Beautiful Thang」である。
 まずスロウのは、音作りはもちろんのこと、語るようなコーラスは、もはや“久保田本人??”と一瞬思ってしまう。特に後半のブリッジ部分のメロディの歌い方など、酷似しており、先に久保田をしていた身としては、逆輸入ではないかと疑ってしまうほどである。
 また、ブギーのは、イントロのキーボードの使い方からして、まさしく、である。柿崎洋一郎参加!と言われても、確実にだまされるだろうと思う。
 いずれにしても、久保田が世界で評価されていることを、思わぬところで証明された気持ちである[*2]

-完成度の高いカヴァ-

オリジナルのほかに、名曲のカヴァを2曲を披露している。まずは、マーヴィン(Marvin Gaye)又はリオン・ウェア(Leon Ware)⑥「I Want You」であるのだが、これだけ評価された楽曲をカヴァするというのは、(いつも書いてしまうが)よほどの自信が無いと出来ない物と思料できる。そして、誰もが“ホントにきちんとカヴァしてくれるの?”という疑いを持ってしまうなか、原曲を大きくいじることも無く、アップデートのみを施して素晴らしいカヴァを聴かせてくれた。なかなかここまでの喜ばしいカヴァは少ないような気がする。本人には悪いが、期待以上の完成度だった。
 もう1曲は、シンプリー・レッド(Simply Red)の、こちらも定番⑦「Holding Back The Years」。これは、アイズレーズ(The Isley Brothers)のカヴァ[*3]にはかなわなかったという印象はあるのだが、あれはロナルド(Ronald Isley)が素晴らし過ぎるので、比較してはかわいそうというものかもしれない。さらりとしたカヴァなので賛否両論分かれそうな気がする。

-本人の考える方向性-

本人がセルフ・プロデュースした⑪「Move On」は、鍵盤と音数の少ない打ち込みのシンプルなもの。上記ののカヴァを選んでいることを鑑みると、もしかしたら本人はこういった“若干白よりのもの”がお好みだったのかもしれない。確かに、声質から似合うのかもしれないが、筆者としては、ちょっと物足りない気がした。

-R&Bチャートは93位-

マイケル以外にも、アンプ・フィドラー(Joseph Anthony Fiddler)[*4]が参加していたり、ゴスペル系アーティスト、例えばヨランダ・アダムス(Yolanda Adams)メン・オブ・スタンダード(Men Of Standard)シー・シー・ワイナンズ(Ce Ce Winans)らの作品に参加しているトミー・ウォーカー(Tommie Walker)も鍵盤を聴かせてくれたりと、インディの新人の割に豪華。マイケルがA&Rまで務めるほど期待していたことがよくわかる。結果として、数字は残せなかったわけだが、長きにわたって聴き続けることのできる作品であることは間違いない。

(2021.06.13)

[*1]2001.11(No.280)参照
[*2]なんか、偉そうにすみません。。。久保田さん、柿崎さんのすごさにはひれ伏しております。
[*3]『Mission To Please』に収録。もともと「Holding Back The Years」はソウル感高め(というかソウル)だが、ロナルドが歌うと、例えばスタンダードもソウルになってしまうという魔法がある。
[*4] パーラメント(Parliament)、ファンカデリック(Funkadelic)に参加しているPファンク一派。ソロで来日もしているベテランである。

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