1. 『Story Of My Heart』
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『Story Of My Heart』(1997)1997
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Review

-2ndには不満-

マリオ・ワイナンズ(Mario Winans)を最初に聴いたのは2nd。バッド・ボーイズの宣伝が大きかったことを思い出す。予定通り(!?)の大ヒット。シングル「I Don't Wanna Know」は2004年を代表するとも言える曲となった。しかし…。正直、好きではなかった…。だからこの1stを高額で手に入れることに戸惑っていた。そんなときにふと見つけた。出張中の鹿児島。\1,000。ここで手にしないでいつ手に入れることができようか。……ひととおり聴いてみる。「これは高額ででも手に入れて良かった作品だったなぁ~。」心からそう思った。

-シングルとなったのは…-

愛聴している多くの人が支持している②「Don't Know」。ウィスパー系のマリオの歌い方が、より切なさをかもし出すスロウだ。この曲は様々なところで90年代の名曲として語り告がれている。それにしても、こちらは“(君の事を)知らない”で、前出の2ndからのシングルが“(そんなこと)知りたくない”という…。なんとも皮肉なことである。このような、歯がゆいこの曲でアルバムの全体像が見えると言っても良いだろう。

-サビの切なさが狂おしい-

珠玉の曲たちがひしめき合って並んでいるので、ベストは各人によって違ってくるのは避けられないと思うが、あえて個人的なベストを選ぶならば⑤「Love Man」。全ての音を彼が操っているところも手伝って、プライベートな雰囲気が伝わってくる。聴いていてとくに胸が締め付けられるのは、サビの導入部分の“Ah A A A Ah~”の部分。遠くから寂しげなコーラスが重なってくるところが彼の真骨頂なのではないだろうか。

-統一された世界観-

他の楽曲も本当にイイ曲ばかりで、さっき選んだばかりなのにベストが揺らいでしまいそうになる。⑦「You Never Know」同様のセンチメンタル系。一定のミディアムのリズムに、決して分厚くないコーラス。⑩「Stay With Me」ではアコースティック・ギターが主役になりきれない程度に響きわたる。⑫「Love Is In The Air」は必要最小限で、これ以上の音数の必要性を感じさせない楽器の選択で、心の琴線に触れてくる見事な1曲。⑮「Don't Take Your Love Away」のようにリズムを刻みながら、丁寧にささやく…。

以上、ここに挙げた楽曲はすべて②「Don't Know」の世界観でまとめられるはずだ。但し、全ての楽曲がすべて自己主張をしっかり持っているところ(ただ似ているだけではない)がこの作品が名作であると言われる所以だろう。

-色を加える-

ミディアム・ダンサーとも言える⑬「It's All Good」スティービー・ワンダー(Stevie Wonder)直系とでも言える様な音作りの⑯「Take My Breath Away」の2曲はアルバムの雰囲気から外れた(といってもバランスを崩さない)アップ。これも充分に“良い曲”と言いたくなる丁寧な作りである。また、④「Every Now And Then」ではアイズレー・ブラザーズ(The Isley Brothers)の「Make Me Say It Again」をサンプリング。先輩へのリスペクトも忘れてはいない。

-高額であろうとも-

1曲1曲を、しっかりと聴いていきたいと本当に思える作品。紛れも無く歴史に刻まれる1枚である。高額でも持っておきたい作品である。

(2010.09.26)

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