1. 『Jersey Ave.』
  2. JEASEY AVE.
  3. artist
  4. privatesoulmusic
『Jersey Ave.』(2001)2001
jeff_redd-down_low

Review

-厳冬の時代に-

男性ヴォーカル・グループには冬の時代と言える2000年代初頭。当時は、ジャギド・エッジ(Jaggid Edge)ドゥルー・ヒル(Dru Hill)といった実績組はアルバムリリースまで至っているわけだが、そんな環境の中でデビューしたのがこのジャージー・アベニューである。

-支えるプロデューサー陣は豪華-

それにしてもメンバーには申し訳ないが、サポートするプロデューサー陣が豪華。ティム&ボブ(Tim Kelley & Bob Robinson)ヴァッサル・ベンフォード(Vassal Benford)、ヴォーカル・グループであるトゥループ(Troop)出身であるスティーヴ・ラッセル(Steve Russell)R・ケリー(R.Kelly)の腹心シェップ・クロフォード(Shep Crawford)と、どうやってこのメンバーと集めたのだろうか?と疑いたくなるほどである。それだけMCAはチカラを入れていたと言うことなのだろうか。

-それぞれの担当は-

最初にシングルとして先行リリースされたのは、スティーヴン・ラッセルの①「I Wonder Why」。横揺れのミディアムをシングルに選ぶというのは自信の表れなのだろうか。甘い彼らの声をよく捉えた良作である。サビで「I wonder why…」と連呼するところなど、のちにアンダードックス(The Underdogs)と活動をともにしたことがよくわかる味付けになっている。
 クレジットを確認したときに、一番に目がいってしまったのはシェップ・クロフォードの名前だったわけだが、彼の手がけた③「Beautiful Girl」は、美しいメロディでベタながらも、きちんとソウルしているスロウ。こちらもシェップらしさが全開のバラードになっている。
 ヴァッサル・ベンフォードは、緊張感のある④「You're The Only One」と、すぐにブランディ&モニカ(Brandy & Monica)「The Boy Is Mine」を連想させられた⑩「Tell Me Why」という、比較的ダークな部分を担当。アルバムに広がりを持たせている。
 ティム&ボブは、彼ららしいと言うか、比較的地味目な⑧「Come Over Gir」⑨「Shorty」を担当。は、チキチキを入れ緊張感を出しつつも、Bメロでのアコギによる解放感&幸福感を味わえる。バウンシなは、時代の要請といったところだろうか。そしてなんと言っても一番彼ららしいアコースティックなセンチメンタル系スロウが⑦「I'll Wait Right Here」マリオ・ワイナンズ(Mario Winans)1stにも通じるこの寂しげで愛しい感じが狂おしい。

-大物に囲まれながらも-

そのようななか、一番名前としては知られていないだろうプロデューサーがいる。カールステン&ヨアキム(Carsten Lindberg & Joachim Svare)[*1]である。電話の発信音のSEから始まる、タイトルもズバリの②「Let's Make Love」というねっとり系スロウ、ヒップホップ・テイストの粗さを醸し出している⑤「You Say You Didn't Know」、三連のしっとりバラードの⑥「Maybe」と、それぞれ色が違う曲を提供。大物プロデューサー陣に交じる中、しっかりとその役割を果たしたと言える。この仕事で仕事を増やしていったと思ったのだが、そうでもない様子。もっと活躍が見たかったのだが…。

-良作であることは間違いないのだが-

兄弟という相性のアドバンテージもあり、歌も秀逸。ハーモニーも悪くない。しかし、その分突出した物が無いことも事実だったのかもしれない。なんというか、毒気が足りないとでも言ったら良いだろうか。ともあれ、1枚で消えてしまうには実に惜しいグループであったことは間違いない。

(2022.02.12)

[*1]2016年にはヒップホップのアルバムをリリースしている彼ら。他での仕事はバリントン(Barrington)の2003年の作品『Best Kept Secret…』でその名前を確認することができるが、他の仕事はあまり聞かない。

List

TOPへ