-勝手な想像ですが…-
アトランタインディ界の雄の3rd。日本で紹介されたのもこの作品からだそうである。筆者の勝手な想像であるが、これは現在も彼の作品の中で人気の高い③「Second Chance」の力なのではないかと思っている。それほど③は出色の出来といえる切ない系のスロウである。
ディスクユニオンのサイトにも、以下のように紹介されている。
ピアノを主体としたキラー・スロウ!「Second Chance」収録のインディ名盤!誕生!レペゼン・アトランタ!インディR&Bを追いかけている好事家達の間ではすっかり有名になったD'MAESTROは今作でも正統派R&Bを聴かせてくれています。(中略)「Second Chance」はインディR&BのCLASSICSとして認定されてもおかしくないハイ・クォリティなスロウでイントロ3秒で即KO間違いなしのメロウ度数高めです。
日本人好みのメロディラインとバイヤーさんも思ったのではないだろうか。
-そのメロウ度高めのスロウ群-
そのほかにも同様なスロウが充実。ラデエ(Ladae)のデビュー作の最後を飾る「Bye Bye」を彷彿とさせる⑦「Loves Gonna Love Me First」は、90'sR&Bを愛する人は必ず反応してしまうシンプルなメロディに鍵盤の絡み。好みの問題で、もっとコーラスを重ねたくなってしまう訳だが、そうすると味付けが濃くなる可能性もあり、このくらいがちょうど良いのかもしれないと納得させられる。
それを痛感するのは続く⑧「Nobody But You」を聴いてから。アコースティック・ギターがほどよく配されているこの曲に濃い味は似合わない。ここに⑦⑧は対で聴きたいものだと感じることが出来る。この⑦はL.V.の2nd『How Long』に収録されている「Thinking Of You」を思い出させてくれて、やはりふたりのイメージが重複してしまうのは避けられないと個人的には強く感じている。
⑪「Lay U Down」では、R.ケリー(R.Kelly)の「BumpN’ Grind」のヒトフシ、「I Don't See Nothing Wrong~」が登場してしまい、デビュー作からのR氏フォロワー的な部分がきちんと表現されている。
続く⑫「Can I」は、90年代前半にコーラスグループが多く歌っていたような旋律、優等生的なスロウ。ボーイズ・Ⅱ・メン(Boyz Ⅱ Men)、アズ・イエット(Az Yet)らが届けてくれていた温かい甘いものである。
-ミディアムダンサーを希望-
アップは、バウンシーな楽曲も多く、筆者は語れない。ミディアムでは、⑤「Girl I'm Ready」が秀逸。横揺れの中にアクセントがあり、心地よく身体を揺らすことが出来る。このような系統の楽曲がもう少し欲しかったと思うのは贅沢というものかもしれないのだが、それくらいに魅力を感じた楽曲である。
-90'sへのリスペクト-
生音も豊富であり、充分に90'sの雰囲気。リスペクトを表現しているように感じる。男性ソロ、メロディ重視、90'sの雰囲気…筆者にはツボなわけだが、マーケット的には厳しい背景は容易に想像できる。インディでなければ表現できなかった世界なのかもしれないのだが、クオリティは間違いなくメジャー級である。
(2021.07.12)