-出自を鑑みると…-
L.A.サウスセントラル出身、サウス・セントラル・カーテル(South Central Cartel)の一員、銃で9発撃たれている…などと、出自を考えると、どうしても「ギャングスタ・ラップの人ね…。」と言いたくなる。事実筆者も、1stのジャケを見たときには、きっと苦手なのでは…。そう思っていた。しかし、この2ndを聴くと、“ソウル・マン”なんだと改めて認識させられる。
-歌に自信があるがゆえに-
そのような潜在意識を介在させるもう1つの要素は、ボビー・ウォマックのカヴァである⑨ 「Woman's Gotta Have It」だろう。つまり、サザン・ソウルなのではないか、という予想である。しかしながらその歌声は、南部系で力強くという風ではなく、渋く通す。この楽曲をカヴァしたアーティストは数多いわけだが、すこし都市によったアプローチというのはL.V.らしさなのだろうと頷いてしまう。いずれにしても、これをカヴァするという行為は、歌に自信がないと無理であろう。
-脇を固めるプロデューサー-
その“歌”を楽しめるものが多数存在している。イントロとアウトロを手がけたのは、トゥループ(Troop)のスティーヴ・ラッセル(Steve Russell)である。このクレジットだけでも“ウタモノ”を感じてしまう。落ち着いたスロウの③「One Chance」は本人との共作で、テレル・カーター(Terrell Carter)の名前も確認できる。そしてミディアム⑧「Hold On」はキャラクターズ(The Characters)が。しっかりと支えてくれるメンバーが集合している。マリオ・ワイナンズ(Mario Winans)の名前もあるのだが、手がけた②「How Long」や⑥「Everyday Hustler」は、(この2曲は皆さん好きという方が多いようですが…)筆者は苦手。マリオの苦手な部分(彼の2ndは筆者は苦手)が顔を出している。
-キキドコロは後半-
無くなった兄弟や恋人に捧げた⑩「Thinking of You」以降のスロウ群には恐れ入る。マーク・ゴードン(Mark Gordon)による⑫「Rain」は本人が手がけたかと思ってしまうほどのゲットー・ライフを歌ったもの。マークにしては重たい雰囲気に5ヤング・メン(5 Young Men)のコーラスが畳み掛けるところにグッときてしまう。
本人も会心の出来といっていた⑬「Lady Sunshine」も同様のスロウ。こちらもテレル・カーターが関与している。前出2曲の重たい雰囲気を破るのはマイロン(Myron)による⑭「I Don't Know Why」⑮「Wherever You Are」。マイロンはホントに生音を活かした良い曲作りをするヒトだと改めて感じさせられた。L.V.も力が抜けているようで、こういうタイプも歌えることを証明している。特に⑮での丁寧な歌いまわしに好感が持てる。また、ボーナス・トラックとしてスタイリスティックス(The Stylistics)のカヴァ⑰「You're A Big Girl Now」が収録されている。ポップな楽曲をソウルに持っていくところが嬉しい。すこしアイズレー(The Isley Brothers)っぽく仕上がっている。
-R&Bにはつらいマーケットだが-
サウス・セントラル・カーテルのメンバーとしての活躍が多い(特に21世紀に入ってから)ようだが、ソロとしてのカラーをもっともっと表現して欲しいな、と。10年というスパンだとちょっと寂しい。彼なら内容も伴ったものを数多くリリースできると思っているのだが…。
(2011.06.26)