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『SunStorm』(2010)2010
sunstorm

Review

-浮遊感とキーボード-

フォーリン・エクスチェンジ(The Foreign Exchange)のレーベルからの初盤。彼らに音楽的に大きな影響を与えたといわれるZO!だが、ここでもその世界観を披露してくれている。全編に美しいキーボードの音色が所狭しと張り巡らされている。

-まずは基本形から-

まずは美しい鍵盤から始まる①「Greater Than The Sun」フォンテ(Phonte Coleman)とのコラボ。ヴォーカルだけでなく本業のラップも披露。ZO!ブランドの紹介といったところだろうか。彼らの2人が基本形であることを認識させられるのだが、これから先はゲスト・ヴォーカリストたちが躍動する。

-ヴォーカリストの特徴を活かして-

いつもは男性ヴォーカルを贔屓してしまうのだが、この作品では女性たちの歌声が素晴らしい。まず②「Greatest Weapon Of All Time」は、サイ・スミス(Sy Smith)のヴォーカルがキーボードの上で踊っているようなミディアム。彼女の妖艶なヴォーカルのスキルがないと成立しないような、それだけ楽曲と声が溶け合っている。

音数の少ないタイトル曲の⑦「SunStorm」は、ヤーザラー(YahZarah)が粘度を高めに歌う。淡々としたスネアを繰り返すこの曲は、歌いすぎることがないことがよく似合う。この怪しい雰囲気に彼女の声ははまっていると言えるのではないだろうか。

トリを務めたモニカ・ブレイリー(Monica Blaire)⑫「Make Luv 2 Me」は10分を超えるアンビエント感のあるスロウ。当然ささやくような歌い方なのだが、言葉を置きにいくようなスタイルは、時にエリカ・バドゥ(Erykah Badu)「Other Side Of The Game」を思いださせてくれた。

-近しい男性陣たちとのコラボ-

男性陣ももちろん活躍している。特に身近なメンバーで固めた⑨「This Could Be The Night」は、エリック・ロバ―ソン(Eric Roberson)はもちろん、ダリエン・ブロッキントン(Darien Brockington)も、ベースラインのリフとリズムが織り成す、緊張感あるトラックを歌いこなす。

ダリエンは⑤「Be Your Man」も担当。ピアノの単調な繰り返しに、スタッカートのように切り落として歌うことが曲を引き立てる。こんなジャジーな楽曲のブリッジに、歪んだギターを織り込んでいるところもZO!のセンスなのだろう。決して雰囲気を壊していない。

これまたジャジーな⑧「If I Could Tell You No」は、ジェシー・ボイキンス・3世(Jesse Boykins Ⅲ)が担当。ジェシーが歌うにしてはかわいい楽曲で、それでもぶっきらぼうに振る舞うのが面白い。途中で入るホーンの音色が安らぎを与えてくれる。

-ZO!のルーツとも言えるインスト-

ヴォーカル・レスの④「For Leslie」は、フルートが旋律を奏でる。また、インストゥルメンタルの中にコーラスパートが入る⑩「Flight Of The Blackbyrd」は、アース・ウィンド・アンド・ファイア(Earth,Wind & Fire)の「Brazilian Rhyme」のような佇まい。サンプリングされる日がくるような気がしてならない。

-筆者に見識を広げてくれた-

ヒップホップ界隈で活躍してきたZO!フォンテだけに、筆者は聴ける耳を持っているのかな…と危惧した1枚だったが、明らかに見識を広げてもらえた作品。素通りしていたフォーリン・エクスチェンジにも触手してみようと考えている。

(2021.01.11)

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