1. 『The Time Has Come』
  2. TWELVE A.M.
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『The Time Has Come』(1995)1995
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Review

-“ザ”インディ・ソウル-

1色刷のジャケットに写る悪そうな5人。そしてトラックのチープさ、歌声の熱さ。どこから切り取っても“ザ”インディ・ソウル。そんな印象がこのトゥウェルヴ・A.M.(Tewlve A.M.)『The Time Has Come』である。ネット経由での流通が定着していなかった95年のプレスが少なく、05年に少しだけ再発されたようだが、よく実現したものだと思う。再発に尽力いただいた方には本当に感謝である。

-スロウ中心のトラック-

作品はスロウ中心にまとめられている。その指揮をとったのは、おそらくメンバーの中心的存在であろうチルことマーカス・フィリップス(Marcus “Chill” Phillips)である。全ての楽曲のプロデュースを手がけているため、統一感が感じられる世界に仕上がっている。

-条件を並べて-

自己紹介的な①「We're Twelve A.M. 」の後に、語りから始まる②「Waste'n My Time」。粘着度の高いリズムに加えて、野太いチル声に、囁くようなコーラスが絡み合う。すでにエロモード全開だ。続く③「I Wanna Understand You」も同様の世界観でありながら、ジェラルド・ウィリアムス(Gerald “Bady Boy” Williams)の歌声で雰囲気が変わってくる。その甘い声色で、年上のお姉さんへ嘆願しているかのようだ。

続く④「No Need To Cry」では雨のSEから入る。多少音が割れ気味に聴こえるのが非常に残念だが、熱い歌声で満足できるので問題なしとしたい。⑤「Finders Keepers」はチルのバリトン・ボイスが吼えまくる。暗いトラックに熱い声がのることにより、さらにソウルを感じてしまう一曲だ。語りの、甘い声の、雨の、吼える…ここまででBeggin’に必要な条件をクリアしている。ベタと言われればそれまでだが、忠実にならべるところにスロウジャムへの愛着を感じてしまう。

-中継ぎ投手が打たれる…-

インタールードの⑥「Another Lonely Night」を挟んで後半戦。これもスロウでスタート。⑦「You Are My Love」も前半同様のつくりだが、ここはチルの独壇場。少ない音数により、彼の声を楽しめる。

しかし、少しリズムが加わった⑧「Let Them Thangs Hang」⑨「I Wanna Scoop」、そして怪しい雰囲気の⑩「Digg'N」については、悪くは無いのだが、同じような音作り…。過食気味になってしまったのは筆者だけだろうか。また、⑫「Would You Do Her」~⑭「Who's The Fool」ではヒップホップ色を強めていってしまい…。アウトロでコーラスを披露してくれたので、まだ救われた感がある。

-チルのソロ作を切望-

前半の世界観で最後まで突っ走ってもらいたかった、というのが本音ではあるものの、作品としては上々。グループとしての再始動が難しければ、せめてチルの歌声だけでも聴いてみたいものだ。ジェラルド・リヴァート(Gerald Levert)系歌バカ。その枠はあまりにも少ないのだから…。

(2011.01.03)

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