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『The Album』(1996)1996
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Review

-やはりこちらのほうが…-

トロイ(Troi)として制作されたアルバムは2枚。人気が高いのはこの1stである。その構図を覆すべく2ndとも比較したのだが、やはりこの1stのほうが粒ぞろいである。

この1stは93年に『Do Something』というアルバムを残しているアーバン・スピーチ(Urban Speech)ケヴィン・オズボーン(Kevin Osborne)が全曲に関与。彼の手腕が振るわれた、クラブ寄りにシフトした作風[1]になっている。

-U.K.‼-

まずこの作品の骨格といえる①「Need Your Love」からはじまる。イントロの“L.O.V.E. love~”の妖艶なコーラスから、爽やかにサビに入る。このあたりの音を聴くと“あ!UKだな!”とすぐにわかるような、そんな開放感が味わえる。その印象は続く②「Never Knew Love」で確定する。デオダート(Deodato)のカヴァになるのだが、本家のカッティング・ギターに女声が乗るライトファンク感をアップデートさせ、ゲイリーのテナーヴォイスでソウルの味付けを施したもので、筆者は本家を超えているように思う。

-ケヴィン・オズボーンの功罪-

上記2曲以外にもアップは充実。白眉は⑤「Angel」だろう。スネアの効いたボトムでありながら、ニュージャック風とは異なるのは、その背景に埋め込まれている鍵盤の音ではないだろうか。かなり遠慮気味に入れてあるのだが、それが目立たないよう、密やかに演出しているところが美しい。最後のあたりはもっと狂ったように弾いて欲しい!と思うのは個人的な好みの問題だろう。

デビューシングルの⑧「Don't Say No」①②同様UKらしさが前に出たミディアム。少し派手さに欠けるので、これがデビュー・シングルだったというのがなんとも不思議である。続く⑨「Tell Somebody」はケヴィン・オズボーン色が強い気もするものの、緊張感の中を泳ぐブラスの音色とゲイリーの声の相性が良い。

このようにアップが占める面積が大きくなってしまった結果、スロウは少々寂しい。個人的な見解だが、ゲイリーはもっとヴォーカルを重視した作風が好きなのではないかと思っている[2]。なので、もう少しスロウの数が多くてもと思ってしまう。③「24 Hours」[3]も個人的には好きなのだが、もう一歩欲しい!と思ってしまうし、④「Fever」も、“本当にアンドレア・マーティン(Andrea Martin)の作曲!?”と少し疑ってしまう。

その中でも、かわいく歌った⑦「My Girl」や、少ない音数の中でゲイリーのヴォーカルが堪能できる⑩「Throughout The Years」といったところが良いのだが、多少ポップよりな気もする。

-アルバムとして楽しむということ-

突出した楽曲があるわけではないが、1枚を流して聴きたくなる。これがこの作品の一番の楽しみ方だろう。1996年のリリースを考えると多少出遅れている(=多少古い)感があるものの、もう少し話題になっても良かったのではないかと思う。

(2020.01.14)

[1] [2]ゲイリーはもう少しヴォーカル寄りのものを作りたかったのではないだろうか。その後の活動(=Soul TalkやThe Voiceでの活躍)を見ると、オーソドックスなスタイルのものを希望していたのではないかと、勝手に考えてしまう。

[3]“The Voice”の出演時に、口ずさんでいたのがこの楽曲。リポーターも合わせて口ずさんでいたので、UKではそこそこ知られた楽曲だったのか?と思う。

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