-ヒップホップ・ソウルの素養は充分-
メアリー・J.ブライジ(Mary J.Blige)の登場から3年。95年は“ヒップホップ・ソウル”という語句も市民権を得ていた。そんな背景にうまくフィットするのがこの作品だ。もともとカナダのヒップホップ・チーム、ライター・シェイド・オブ・ブラウン(Lighter Shade Of Brown)の客演シンガーでシーンに登場した彼女。ヒップホップ・ソウルの素養は充分だった。
-日本でもクラシック化したタイトル曲-
まずはGファンクの①「Feel The Funk」から。決して太くはないその声が、重たい音に立ち向かう。少しアンバランスに感じるかも知れないが、徐々にこれが面白く感じてしまう。それはポ・ブロークン・ロンリー(Po Broken' Lonely?)のルーベン・クルーズ(Ruben Cruz)と共演した、タイトルもそのままな⑧「Hip Hop R&B」や、なぜかエヴリン“シャンペイン”キング(Evelyn “champagne” King)の「Love Come Down」を思い出してしまう⑤「U Don't Hear Me」でも同様だ。
その絶妙な、一歩間違えば壊れてしまいそうなバランスが最高潮に達したのが、④「Can We Talk」。今やクラシックとなってしまったこの曲は日本でもヒット。ドラマティックな展開は今も、何度聴いても楽しませてくれる。 この力強いトラックをシャイロ(Shiro Stokes)が上手く乗りこなしている。
-他の楽曲も聴くべき-
“「Can We Talk」1曲だけでも買い”などと言われる方もいるが、それではもったいない。スロウもしっかり楽しめる。②「Tell Me (Would You)」は、ルーファス&シャカ・カーン(Rufus & Chaka Khan)の「Sweet Thing」を下敷きにした温かい曲。メアリー J.のデビューのきっかけが、アニタ・ベイカー(Anita Baker)の「Caught Up In The Rapture」を歌ったことらしいが、やはりあのキラキラの時代のヒット曲が好きなのは同様のようだ。
確かにシャイロの声は80'sにハマる。しかしながら、その②よりも声質を捕らえたカンがあるのは、⑨「Man Of My Dreams」⑩「Summer Daze」ではないだろうか。お行儀が良すぎるかもしれないが、SWVやドラマ(Drama)、ノーナ・ゲイ(Nona Gaye)あたりが歌いそうな90'sなトラックだ。
-お互いに必要な存在-
これらのほとんどを手がけたのは、シャイロ本人とインディアナ出身のラッパーでもあるマイケル・バーバー(Michael Barber)。どうやら駆け出しのころにこの作品に関わっているようで、近年ヒップホップ畑で実績を作っているようだ(NASやエイコン(Akon)など)。ヒップホップのプロデューサーが生み出すR&B。まさしくシャイロには必要なプロデューサーだったに違いない。
(2010.06.28)