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『Sherrick』(1987)1987
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Review

-伝説化-

ソウル不遇の時代とされる80年代。ニュー・ジャック・スウィングの波が辿り着くほんの少し前の87年夏にひっそりとリリースされ、今や伝説と化したシェリック(Sherrick)。生前に残した唯一のアルバムだ。

全体的に打ち込みが中心になっており、今聴くとさすがに当時の音が古臭いことは否めないのだが、そんなことを割り引いても、やはり語られるべき名盤である。

-好調なスタートだった-

①「Tell Me What It Is」から80年代の香り。まさしくニュー・ジャック前夜のダンストラックだ。当時シングルだったのは②「Just Call」。発売時期が夏だったことがうなずける、ポップなアップチューン。R&Bチャート8位まで上昇し、新人としては素晴らしいスタートであった。

-直球で表現-

⑤「Do You Baby」は、ライナーにも書いてあるが、ホントにルーサー(Luther Vandross)そっくりである。シェリック自身もルーサーの「Never Too Much」をフェイバリットに挙げており、あからさまに表現した形である。ヴォーカル・ワークだけでわなく、ギターのカッティング、キーボードのからみ、コーラスワークなど、聴き比べてみるのも面白い。

-他にもさまざまなレジェンドが降臨-

スロウナンバーは③「Baby, I'm For Real」。これはオリジナルズ(The Originals)のカヴァーであると同時に、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の作曲によるもの。こういったソウル・クラシックを軽々と歌いこなすところにシェリックの実力を思い知らされる。

⑥「All Because Of You」はリゾート+メイズ(Maze featuring Frankie Beverly)の優しさとでも表現しようか。吉田美奈子がコーラスしててもおかしくない気がする。

そして、白眉は⑧「Lady You Are」。どこでもこれをベストに挙げられているのだが、これは避けられない。イントロのトラックからシェリックの語りが乗っかり、コーラスに入る。そしてサビを歌いだす。ここでの力強い歌いまわしは、声質は違えど、デルズ(The Dells)を思い出した。

-貴重盤でも聴かれなくては意味がない-

このアルバムが再発される前は、中古盤屋でうん万円の値がついていたらしい。そういった作品を再発してくれたヴィヴィッド・サウンド(Vivid Sound)には本当に感謝したい。貴重盤の所有欲はうれしいものだが、やはり作品は多くの人に聴かれるべき。このような動きが広まることを期待したい。

(2005.12.15)

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