-鬼才軍団-
フル・クルー・プロダクション(Full Crew Production)が全面サポートしたシャイラ(Shaila Prospere)の唯一のアルバム。このプロダクションは、ウェイン・ロウズ(Wayne Lawes)、リカルド・リード(Rickardo Reid)、マイケル・デイリー(Michael Daley)のロンドンで活躍する、ダンス物、ウタ物ドンと来い!の鬼才集団である。確かに大いにUSマーケットを意識したものであるが“英国ソウルの生真面目さ”みたいなのを感じる。今回、彼らが手がけたこの作品は“ボーカル”重視のものとなった。それはおそらく、ほとんどの楽曲を手がけたシャイラ本人の書く曲が、いわゆる伝統的なソウル・マナーにのっとったものだったからだろう。アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)などをフェイバリットとする彼女だから当然であろう。
-バランスを感じる-
②「Reoccurring Dream」、⑤「Mistakes」、⑦「Good Guys」のようなミディアムの出来が素晴らしい。中でも②の出来が出色。サビへの展開がドラマティックに感じられる。その中にもどこか哀愁を感じる…。トニ・ブラクストン(Toni Braxton)のお株を奪うような仕上がりだ。
一転スロウならば、⑪「Tell Me Why」がベスト。もしもこれがプリンス(Prince)の楽曲ならば、きっとバックにギターをふんだんに散りばめることが予想されるという狂おしいバラードだ。この曲で特に感じるのだが、彼女の魅力のひとつとして、高音を出すときのヴァイヴ感。震え。これ以上やりすぎるとイヤになる、その手前ギリギリを心得ているような気がする。
-ポップなものは敬遠-
歌がしっかりしているだけに、⑥「Imagine That」、⑫「Crazy」というようなポップなものをやると、US白人マーケットを意識したのかとどうしても勘ぐってしまう。ソウル・ファンにとっては、この路線はちょっと敬遠したい。
なお、日本の配給はブラウンシュガー・レコード(Brown Sugar Records)。日本にソウル文化を根ざすべく、良作を出していたことは、ソウル・ファンの間ではありがたいことであった。
(2005.12.07)