1. 『The Other Side』
  2. SEAN LEVERT
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『The Other Side』(1995)1995
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Review

-ショーンの存在は-

リヴァートでは作詞作曲をするわけでもなく、リードをとるわけではない。そつなくコーラスを担当する程度で目立った活躍はしていない。エディ(Eddie Levert Sr.)の息子だから、ジェラルド(Gerald Levert)の弟だから、なんとなくリヴァート(Levert)に在籍している…。ショーンの立ち位置を強く感じることはなく、勝手に上記のような印象を抱いていた。そのためショーンが唯一表舞台に立ったこの作品も、期待値としては低かった。

-やはり歌える!再認識。-

しかし、結果はショーンの印象が変わるほど充実した物であった。ショーンはこれだけ歌えるんだと、改めてリヴァート一家の底地からを感じた。

それを一番に感じるのは、パパとお兄ちゃんと共演した③「Same One」である。彼ら2人のバリトンの分厚いサポートを受けながらも、あくまでリードはショーンが担当し、引っ張っていく。シングルとしてのリリースもあったがR&Bチャートでも57位と、数字的には今ひとつといえるが、この三連系のバラードは、リヴァート史に残る貴重な楽曲と言える。
 これに続くのは先行シングルとしてリリース[*1]された④「Put Your Body Where Your Mouth Is」になるわけだが、こちらも負けていない。エドウィン・ニコラス(Edwin “Tony” Nicholas)の音作りが素晴らし過ぎるということに尽きてしまうミディアム・スロウだが、そのプロダクションに湿度の高いショーンの歌声がのることで、さらに完成度が増すという、リヴァートを理解しているエドウィンだからこその楽曲になっている。

-トレヴェル以外の参加者-

そんなファミリー色の強い作品ではあるものの、実はジャーメイン・デュプリ(Jermaine Dupri)マニュエル・シール(Manuel L. Seal Jr.)が参加している。ジャーメインらは、時期的にクリスクロス(Kris Kross)をヒットさせ、さらにエクスケイプ(Xscape)を送り出した頃で、2人にしては名前が売れてきたところ。おそらく2人とも多忙を極めていたはずなのだが、そのような中で3曲を提供してくれている。
 オープニングを飾る①「I'm Ready」は、2人らしい音数を削ったミディアム・ファンクの体裁。音数が少ないことでショーンが歌えるという事実を示してくれているように聞こえる。その他、怪しげなイントロからスクラッチを加えストリート感を覚えさせる⑤「Place To Be」と、トリを飾り、ロジャー(Roger Toroutman)の「I Wanna Be Your Man」のヒトフシを借用してくる⑩「Only You」と、贅沢にもアルバムのフックとしての役割を果たしている。

-安心の布陣-

上記3曲以外は、トレヴェルの仲間たちによるもので、相性が悪いはずもない。緊張感のあるミディアムの⑥「I'm In A Freaky Mood」、少し悪ぶったように歌うショーンが印象的なアルバムタイトル曲⑦「The Other Side」ジョー(Joe)の「Love Don't Make No Sense」のようなけだるいミディアムの⑧「Just For The Fun Of It」ザップ(Zapp)の「Computer Love」使いに加え、ヴォコーダーも見せてくれる⑨「Tasty Love」と、よどみなく続いていく。まさしく安心のトレヴェル印といえるだろう。

-プレッシャーとの戦いと子どもたちに期待-

リヴァートの血統から、どうしてもハードルが高くなっていただろう。この作品もそうだが、ショーンもきっと、ずっと大きなプレッシャーと戦っていたのだろう。それがザナックスと結びつくとは考えたくないが、なんとかその壁を越えて、マークと進めていたリヴァートⅡ(Levert Ⅱ)を成功させて欲しかった。残した6人の子どもたちから、血統を広げていく活躍を見せてくれることを祈りたい。

(2022.01.23)

[*1]R&Bチャート40位を記録。

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