-肩透かし!?-
ラフェイス(LaFace)からのリリース。出自を考えるとベイビーフェイス(Babyface)が多く楽曲を提供…と思いきや、なんとExecutive Produce止まり。少々肩透かしを喰らった。しかし、中身は彼の影響無しには語れない、甘美な世界が広がっている。
-では誰が!?-
その世界観を再現したのはトリッキー・ステュアート(Christopher “Tricky” Stewart)とセップ・ホール(Sean “Sep” Hall)のボスプロダクション(Boss Production)コンビ。よってオープニングから続けて彼らの楽曲が配されている。地味でありながら存在感のあるミディアム①「Your Face」のほか、ロンドン・ジョーンズ(London Jones)のクレジットが嬉しい③「It's On Tonight」はラーサン・パターソン(Rahsaan Patterson)かと思えるような軽いファンク。しかし、何を差し置いてもここで紹介したいのは、上記のコンビに加え、トリッキーの兄:レイニー・ステュアート(Phillip Laney Stewart)である。サム・ソルター(Sam Salter)本人とともに書き下ろしたシングル②「After 12, Before 6」の仕上がりは、“これぞLaFaceスロウ”と、うなりたくなる甘いメロディラインだ。
ここで登場したレイニー・ステュアートが、この作品の一番の功労者。第2弾シングルとなった⑤「There You Are」も②同様の、ぎりぎりポップとまではいかないバラード。また、サムとの共作である⑥「I Love You Both」はネットリ系スロウ。“若くして子どもをもった女性、そしてその子どもまで愛す”という内容を心の奥から問いかけるところに心打たれる。その他、シンプルな音作りでサムの声を楽しめる⑩「It Took A Song」、ボーイズⅡメン(Boyz Ⅱ Men)が歌いだしそうな⑪「On My Heart」とスロウばかりを提供している。どれも優しさに包まれている。
-良い意味で出力された白さ-
彼ら以外の提供者を見てみよう。⑦「Show You That I Care」は一聴して童顔氏作風。トニー・リッチ(Tony Rich)が提供しているのだが、この人の楽曲はポップすぎてあまり…というのが正直なところ。しかし、この作品群に入り込むとそのメロディの良さが際立つ(最後の転調するところなど恥しくなってしまうほどだが)。この手ばかりだと胸焼けしてしまうが、ほどよい甘さを素直に堪能できる。そういう意味では、⑧「Everytime A Car Drives By」を手がけたロビン・シック(Robin Thicke)も近いものを感じるのだが、得意のギターを絡めたきれいなミディアム・スロウは、優しい気持ちにさせられる(楽曲は前出のレイニー・ステュアートと共作)。
-気になるクレジット-
クレジットで気になったのは④「Give Me My Baby」ではスムーヴ・コーネギー(Kenny “Smoove” Kornegay)が、⑫「Coulda' Been Me」はロビー・ネビル(Robbie Nevil)、ゴードン・チェンバース(Gordon Chambers)という名前。⑫は、アレンジはゴードン、世界観はネヴィルといったところか。どこかイナタイ雰囲気が、逆に温まる。
⑬は②のGhetto Fabulous Remixで、シェークスピア(Kevin “She’kspere” Briggs)の名前が…。だから苦手なのか…。はっきりいって別曲である。
-境界線でソウルする-
現在のレコード業界では、絶対にリリースされないであろう、新曲ばかりのバラード集ともいえるデビュー作。また、ニュー・クラシック・ソウル後の登場、派手な曲がない…そんな要因もあったのかもしれない。セールスも地味に終わってしまった様子だ。しかし、この甘さを支持するファンは多い。ポップとの境界線でソウルする、彼のポジションは大切だと思うのだが…。
(2011.06.15)