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『To Whom It May Concern』(1993)1993
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Review

-ありがちな話-

1stでのおとなしい印象を払拭する…。

これを狙った場合、つまらないアップが増えてしまい、本当のグループ(もちろんソロでも)の良さが見えず、失速してしまうことが多い。だからこのリフ(Riff)の2ndも、正直期待していなかった、というのが本音だった。しかし、嬉しい誤算。その予想をしっかり覆してくれた。

-時代はニュージャック-

その立役者は、テディ・ライリー(Teddy Riley)率いるニュー・ジャック・スウィング・プロダクション(New Jack Swing Production)の面々。バーナード・ベル(Bernard Belle)エリック・ウィリアムス(Eric Williams)ウォルター・スコット(Walter “Mucho” Scott)らに加え、キャラクターズ(The Characters)も参加している。これだけの面子が揃えば、確かにアップも充実するだろう。

それが如実に現れているのが、リード・シングルとなった⑦「Judy Had A Boyfriend(Mucho Radio w/Rap)」B.T.エクスプレス(B.T.Express)「If It Don't Turn You On(You Outta Leave It Alone)」のリフがしっくりとはまっている。バーナード・ベルの楽曲をウォルター・スコットがプロデュースしているのだが、テディ周辺で活動していただけあり、本物のニュージャックを堪能できる。バーナードのオリジナルである⑫「Judy Had A Boyfriend (Bernard Belle Original Mix)」のほうがよっぽどリミックスっぽい気がする…。同様にハネるのは④「Adjust Your Love」。パーカッションの音など細部に音をつむぎ合わせているところは、流石キャラクターズである。

-それでもスロウが聴きたい-

上記のような変化を見せ、“オレ達はバラードだけじゃないんだぜ” とでも言わんばかりの一面を表現しつつも、1stでのファンを逃がさない楽曲も準備。⑤「Don't Leave」トニーズ(Tony Toni Toné)の「Anniversary」のような憂いのあるギターから入り、リネイ&アンジェラ(Rene&Angela)の「You Don't Have To Cry」と思わずニヤリとしてしまう歌いだしが印象的なスロウ。これを手がけたエリック・ウィリアムスは、ミディアムの②「Baby I'm Yours」も提供。メロディを大切にするところが彼らしい。また、自信があるコーラスワークを存分に披露する⑥「To Whom It May Concern」や、アカペラの⑬「Lift Every Voice And Sing」などは、1stが好きだった方には必ず受け入れられると思われる優等生スロウである。このように、ヴォーカルを楽しむ内容もしっかり残している。

-カヴァーとキャラクターズ-

話題となったのは2つのカヴァーだろう。アイズレー・ブラザーズ(The Isley Brothers)③「Voyage To Atlantis」は原曲をさらにマイルドにしながらも、アーニー(Eirne Isley)っぽいギターはしっかり残す。原曲を大事にしていることが良く分かる。ただ個人的には、もう少し歌い倒しても良かったかなと思ってしまった。

もう1曲はスウィッチ(Switch)のカヴァである⑨「There'll Never Be」。スウィッチといえばボビー(Bobby DeBarge)トミー(Tommy DeBarge)デバージ兄弟が在籍していたことでも知られるグループだが、そのポップ寄りな作風がはっきりと分かる楽曲を選曲しているところがニクいところ。この曲を真ん中にし、語りから入るアダルトな雰囲気の⑧「Interlude」、ポップな、ミディアムの中に溶け込むハネが心地よい⑩「Don't Go Nowhere」と連続してキャラクターズが手がけているのだが、この流れは連続して聴いて欲しいところ。どんなタイプの楽曲も捨て曲なし。それがキャラクターズだろう。

-この2ndのほうが好き-

冒頭にも書いたが、当初の予想を裏切ってくれた。個人的には、“この2ndは、1stを凌駕している”と断言したい。

(2012.09.30)

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