-地味に進んだ-
95年リリースの3rd。前作『12 Play』が売れに売れた(500万枚以上の大ヒット)こと、さらにマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の「You Are Not Alone」をUSチャート初登場No.1へ導いたことなどにより、派手なものになると予想された。しかし、その世界をさらに深めつつ、地味に仕上げた。筆者には、コレがうれしかった。
-秀逸なスロウ群-
ライヴ仕立ての①「Intro-The Sermon」から始まる。彼が今までに悩んだこと、売れた現状について、そして将来など、彼が本当に伝えたかったことを書いたのだろう。ここで、「神様のおかげ」的な教会出身者としての姿も垣間見せている。②「Hump Bounce」ではクレジットはないものの、おそらくアリーヤ(Aaliyah)のコーラスが聴ける。ネットリ感のある曲に、彼女の清涼感のある声が映える。③「Not Gonna Hold On」はニュー・ジャックを彷彿させる1stのような手触りのミディアム。ちょっと懐かしい打ち込み音も心地良い。
④~⑥は怒涛のスロウ3連発!④「You Remind Me Of Something」はまさしくケリー・ワールド。彼の確立した世界へ招き入れられる。その流れからの⑤「Step In My Room」はメロディーが重視された、聴きやすいオーソドックスなスロウ。部屋に入ると⑥「Baby, Baby, Baby, Baby...」と、ひたすら口説かれる。このあたりが彼の真骨頂と言えるだろう。
-シーンの流れに寄り添いながら引っ張る-
ゲストに長年の彼の憧れ、ロナルド&アーニー・アイズレー(Ronald & Ernie Isley:The Isley Brothers)を迎えた⑧「Down Low (Nobody Has To Know)」は、タイトルそのままのダウン・ロウ・ビート。ブラック・ミュージック界の時流が、だんだんとボトムを落としていくなか、さらに拍車をかけるような仕上がりとなった。
-こうなったらいつまででも待ちますよ!-
そして、このアルバムの最後に収録された⑯「Trade In My Life」は、冒頭でも見せていた、ゴスペルへのリスペクトを表現。コーラスをまとめたのはカーク・フランクリン(Kirk Franklin)。さすが、コンテンポラリー・ゴスペル界の重鎮である。適任が配置されたといえる。“君と引き換えに、この命をささげよう…”というベタな曲だが、大げさに感じることはなく、しっかりと心に入り込んでくる曲。この曲が「I Believe I Can Fly」へと繋がるわけだが、筆者はこの楽曲のほうが好きである。
そして、ボーナス・トラック。ブルーイ(Bluey:Incognito)がリミックスを手がけ、ちょっとお洒落に仕上げている。これまた、日本盤をオススメしたい。
(2006.01.19)