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『Southern Woman』(2007)2007
pookie lane

Review

-地理的な背景-

ミズーリ州セントルイス(St. Louis,MO)から南に、直線距離にして300km下る。そこにあるのが、アーカンソー州ブライスヴィル(Blytheville,AR)という都市である。さらに80kmほどくだるとテネシー州メンフィス(Memphis,TN)に到着する。
 諸説あるが、ミズーリはアメリカ南部に含まれたり含まれなかったりする場所だが、アーカンソー、テネシーは必ず南部に含まれる。そんな地理的な背景が、ブライスヴィル出身であるプーキーの音楽にしっかり刻み込まれている。オル・スクール(Ol Skool)は、セントルイス出身というアナウンスがなされている。音的にも南部の香りは希薄。勝手な推測だが、南部出身のプーキーにとっては、グループと多少方向性が異なっていたのでは無いだろうか。

-まぁ、シノゴノ言わずに!-

そんなことは推測に過ぎないわけが、この作品は南部に振り切っている。グループの作品とは異なり、メンフィスからの南風がビュンビュン吹いている。作品自体もテネシーで制作されている。

セントルイス出身…と出自を誤っていた筆者は、①「Southern Woman」を聴くとまず驚いてしまった。おもいっきりの陽気なサザン・ソウル。もっとアダルトな夜の世界観と勝手に想像していた期待を大きくひっくり返された。しかし、サザン・ソウルは勉強不足な筆者にも、“シノゴノ言わず聴いてみな!”とプーキーが言っているようなパワーを感じた。
 同様の雰囲気は④「You Are Appreciated」でも。軽快なギターのリフと、抑え気味なコーラスの上で吠えるプーキーの歌声が絡み、とにかく気分が高揚する。

また、南部マナーのスロウである⑪「The Tribute」は、シンプルなメロディを真摯に歌うプーキー、サビのコーラスが丁寧に声を重ねていき、だんだんとプーキーが吠えていくところなど、ジャケットに記述のある“The Balladeer Of Southern Soul”に偽りなし!と思わせてくれる。

-優しさを感じる楽曲群-

その他の楽曲も、優しい。人間同士の争いとか、そういうことはどうでも良いじゃ無いかと言われているような…。詞が変わればコンゴスといえるような楽曲群である。

プーキーの声がジェラルド・リヴァート(Gerald Levert)と重なるような吠えっぷりの②「Love the Way We Use To」、イントロのギターの入り、時に強く打つ鍵盤が泣かせてくれる③「Knockin'」、切ないマイナー系の音でまとめられた⑤「Moments」、プーキーのヴォーカルが存分に楽しめる⑩「Work It Out」など、どれもそれぞれの個性を持ちながらも、全体としては溶け合っているという理想的なバランスになっている。

-バランスは崩さずに、アダルト路線も-

多少南部路線から逸脱し、アダルトなムードに連れて行ってくれるのが、女声コーラスに誘惑と妖艶なギターの音色とそれに応えるように抑えめに歌う⑧「On And On」、三つ打ちのリズムに低くとどろく歌声、タイトルから直球な⑨「Come Into My Bedroom」である。特にのブリッジで使われるエレピの効果的なことこの上なし!この連続する2曲は他の楽曲とは異なる路線でありながらも、やはり全体のバランスを崩さない程度というのがうれしい。

-立ち向かう姿勢-

ウタで勝負!という時流とはまったく異なりながらも気概のある作品。2007年によくぞこんな骨太な作品を残してくれたと、こころから感謝したい。ソウルは死なない。そんなことを思い返させてくれた。

(2021.10.09)

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