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『On Point』(2003)2003
otis_and_shugg-we_can_do_whatever

Review

-安心の“Soul Digger”チャート制覇-

石島春美先生の“Soul Digger”[*1]で首位を獲得。その時の第2位がルネッサンス(Renaizzance)の反則的ベスト盤。そう聞いただけで心が動かされる1枚。この情報だけで必聴盤といえると確信していた。
 当然その予想を裏切ることもなく、シッカリと聴ける作品である。

-Troy Taylor of Characters-

手がけたのはトロイ・テイラー(Troy Taylor)。作品のリリースを考えると、キャラクターズ(Characters)晩期に当たり、B2Kを手掛けていたころと重複する。つまり、脂がしっかりと乗った旬のテイラー作品といえるのではないだろうか。

シングルとなった②「I Need You」はキャッチ―なミディアム。トロイ・テイラーの得意とする“聴きやすいのにソウルする感覚”が詰まっている。この万人受けしそうな楽曲を冒頭に持ってくることで、聴き手の入り口が大きく広がっているのではないだろうか。

同様の雰囲気を持っている⑥「Just Ain't Right」もトロイ・テイラーによるもの。これはデビューシングルとなっている。メンバーの誰が高音・低音を担当しているのかわからないが、重なるハーモニーが感じられるのが嬉しい。ただ、録音状況なのかわからないが、音が割れている箇所があったりして、そこだけが残念でならない。ちなみに、シングルにはヒップホップ・ミックスなるものが収録されているが、筆者は断然アルバム収録Verを推したい。 また、トロイ・テイラーは⑤「Games」も手がけている。

-意外にも、といっては失礼!?-

話題性という面では③「It's Alright」カール・トーマス(Carl Thomas)の参加。これは前年にリリースされていた同タイトルのアルバム[*2]には収録されていないことから、おそらく新録したと思われる[*3]。しかし、ここではカールが全面に張り出すことはなく、むしろ3人を支えている風なところが好感が持てる。よく、こういった楽曲が作品全体のバランスを崩してしまうことがあるのだが、ここでは皆無である。

-このお二人も存在感あり-

その他クレジットで名前が確認することができる中で、まず最初に挙げるべきはトロイ・オリヴァー(Troy Oliver)になるだろう。ナスティな⑨「Never Say」や王道スロウ⑫「Forever Love」をプロデュースしているのだが、個人的にはを推したい。これまでの話がプロデューサー中心になっているのだが、全ては主役であるオン・ポイント(On Point)のメンバーの声があってのもの。それをきちんと証明できるのはこういったストレートなスロウなのだろうと思う。サビの哀愁感に加えて暑苦しさがもっと欲しい気もするが、この辺は好みの問題だろう。

ラサーン・ラングレー(Rahsaan Langley)[*4]によるライト・ファンクでありながら、エッジはしっかり効いている⑬「So Real」は、彼らの違う一面を引き出すようなアグレッシヴ感が面白い。

-他にも佳曲ぞろい-

ざらついたスロウの⑩「When I Touch You」モンテル・ジョーダン(Montell Jordan)風な楽曲にファルセットの絡み方が心地よいミディアム⑧「What's Up Tonight」など噛みしめたい曲はひしめいており、まだまだ味が出てきそう。リリースから時がたっても楽しませてくれる作品は多々あるが、このスルメ感覚はかなりのものである。

(2020.04.30)

 

[1]『Bmr』2004.3(No.307)掲載。
[2]2002年にモノクロジャケットでアルバム『On Point』をリリース。その焼き直し盤(理由不明)が本作である。
[3]『Bmr』2004.4(No.308)「critical eyes」にて林剛さんが解説。「ケリース(Kelis)“Flash Back”に激似のネプチューンズ型ファンクで、3年前には決してはいることのなかったタイプの曲」
[4]地元ニューヘイヴン(New Haven CT)近郊に在住のプロデューサー。われらがジェラルド・リヴァート(Gerald Levert)のツアーにも参加していた。Webにはこれまでにかかわったアーティストの名前があがっているのだが、日本からミーシャ(Misha)の名前が。但し、スペルはMisaと書いている。この辺はご愛敬か。

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