-世間的にあまり評価されていないものの-
チャート・アクションは悪かった。そして、BMR誌[*1]を始め、Webサイトも見る限り、あまり前向きな反応はない。しかしながら個人的にはアルバムとしての聴きやすさもあり、推したい1枚である。
-当然のプロデューサー-
プロフィールでも触れたとおり、メンバーのシャバップ(Shabop)は、ディール(The Deele)のベーシスト、ケイヨー(Kevin “KAYO” Roberson)の娘である。当然、ケイヨーが全編をプロデュース。これを時代についていけていないとする向きもあるようだが、ケイヨー(というかディール)らしいタイムレスな部分があり、筆者的にはむしろこれが良かったりする。
-自信のある?構成-
それにしても思い切った構成である。①「Edge Of My Bed」~⑤「Vibe」までを、ミディアム~スロウでまとめた。
グループ名に絡めた上で“My Bed”という言葉を冠した①はシングルにもなっているため、おそらくこの路線で売り出しを図りたかったのではないだろうか。女性の喘ぎ声もちりばめられたセクシー路線は、アーニー・アイズレー(Ernie Isley)風のギターで始まる②「My Mind Is Naked」でも継続。こちらもタイトルに“Naked”を持ってきているあたり、確信犯といえる。セールス的にはわからないが、筆者にはこの戦略は響いた。この2曲だけでも充分に彼女たちの魅力を感じた。
暗く重たい雰囲気にジャズピアノがのせられた③「Don't Go Ho」に続く④「Would You Lie To Me」は、メンバーのザ・リズムとシャバップで作曲したミディアム。94年にしては多少古い打ち込み音ではあるものの、サビのメロディーが秀逸である。
テディ・ビショップ(Teddy Bishop)がティム・トーマス(Tim Thomas)と組んで製作[*2]した⑤「Vibe」は、ヒップホップ要素を盛り込んだミディアム。この楽曲を鎹にして、アルバムはストリートにベクトルを動かしていく。
-仮説ではあるが-
インタールードである⑥「Black Berry Juice (Interlude)」からはザ・リズムのラップが前面に登場してくる。ここからの構成や、作曲のクレジット[*3]を見ると、このグループはシャバップではなく、このリズムがリーダー的存在だったのではないだろうか。スティービー(Stevie Wonder)の⑧「Maybe Your Baby」のカヴァにしても、自身でライムを書いており、かなりヒップホップ寄りに仕上げている。この作風は彼女の意向ではないかと思っている。
-意外?な人物の登場-
トニーズ(Tony Toni Toné)のドゥウェイン(Dwayne Wiggins)が手がけた⑩「69 Wayz」は、彼らしいファンク。この路線を期待した方も多かったのではないかと思うような、明るい彼女たちの魅力を引き出してくれている。 クレジットにカリフォルニア録音と書いてあったが、ここに答えがあった。
-アルバムの雰囲気を壊さない終わりかた-
ザ・リズムによるアウトロの⑪「Black Berry Juice (Outerlude)」の後に、隠しトラックとして①のバックトラックにのせて彼女たちが語っている。やはりこの①を軸として作品が作られていることが証明されている。何度も重ねてしまうが、筆者はこの構成にとても好感を持っている。
Amazonで確認したところ中古で¥11。驚きの価格である訳だが、であるならば充分に買い!と言える。
(2020.04.30)
[1]『Bmr』1995.2(No.198)掲載
[2]この⑤のほか、⑨も彼らの手によるもの
[3]作曲者として、①②④⑥⑪にクレジットがある