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『On Edge』(1994)1994

Review

-世間的にあまり評価されていないものの-

チャート・アクションは悪かった。そして、BMR誌[*1]を始め、Webサイトも見る限り、あまり前向きな反応はない。しかしながら個人的にはアルバムとしての聴きやすさもあり、推したい1枚である。

-当然のプロデューサー-

プロフィールでも触れたとおり、メンバーのシャバップ(Shabop)は、ディール(The Deele)のベーシスト、ケイヨー(Kevin “KAYO” Roberson)の娘である。当然、ケイヨーが全編をプロデュース。これを時代についていけていないとする向きもあるようだが、ケイヨー(というかディール)らしいタイムレスな部分があり、筆者的にはむしろこれが良かったりする。

-自信のある?構成-

それにしても思い切った構成である。①「Edge Of My Bed」~⑤「Vibe」までを、ミディアム~スロウでまとめた。
 グループ名に絡めた上で“My Bed”という言葉を冠したはシングルにもなっているため、おそらくこの路線で売り出しを図りたかったのではないだろうか。女性の喘ぎ声もちりばめられたセクシー路線は、アーニー・アイズレー(Ernie Isley)風のギターで始まる②「My Mind Is Naked」でも継続。こちらもタイトルに“Naked”を持ってきているあたり、確信犯といえる。セールス的にはわからないが、筆者にはこの戦略は響いた。この2曲だけでも充分に彼女たちの魅力を感じた。

暗く重たい雰囲気にジャズピアノがのせられた③「Don't Go Ho」に続く④「Would You Lie To Me」は、メンバーのザ・リズムとシャバップで作曲したミディアム。94年にしては多少古い打ち込み音ではあるものの、サビのメロディーが秀逸である。
 テディ・ビショップ(Teddy Bishop)ティム・トーマス(Tim Thomas)と組んで製作[*2]した⑤「Vibe」は、ヒップホップ要素を盛り込んだミディアム。この楽曲を鎹にして、アルバムはストリートにベクトルを動かしていく。

-仮説ではあるが-

インタールードである⑥「Black Berry Juice (Interlude)」からはザ・リズムのラップが前面に登場してくる。ここからの構成や、作曲のクレジット[*3]を見ると、このグループはシャバップではなく、このリズムがリーダー的存在だったのではないだろうか。スティービー(Stevie Wonder)⑧「Maybe Your Baby」のカヴァにしても、自身でライムを書いており、かなりヒップホップ寄りに仕上げている。この作風は彼女の意向ではないかと思っている。

-意外?な人物の登場-

トニーズ(Tony Toni Toné)ドゥウェイン(Dwayne Wiggins)が手がけた⑩「69 Wayz」は、彼らしいファンク。この路線を期待した方も多かったのではないかと思うような、明るい彼女たちの魅力を引き出してくれている。 クレジットにカリフォルニア録音と書いてあったが、ここに答えがあった。

-アルバムの雰囲気を壊さない終わりかた-

ザ・リズムによるアウトロの⑪「Black Berry Juice (Outerlude)」の後に、隠しトラックとしてのバックトラックにのせて彼女たちが語っている。やはりこのを軸として作品が作られていることが証明されている。何度も重ねてしまうが、筆者はこの構成にとても好感を持っている。

Amazonで確認したところ中古で¥11。驚きの価格である訳だが、であるならば充分に買い!と言える。

(2020.04.30)

[1]『Bmr』1995.2(No.198)掲載
[2]この⑤のほか、⑨も彼らの手によるもの
[3]作曲者として、①②④⑥⑪にクレジットがある

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