-曲の出来-
歌い倒すグループではない。ということは、お行儀の良いコーラスが売りなのか、と思ってしまうのだが、そうではない。この作品はとにかく楽曲が良い。クワイエット・ストーム~ニュー・ジャックの時代の美味しいところを巧く結び合わせ、巧みに表現している。
-意識的にストリートに寄る-
それを演出しているのはレックス・ライドアウト(Rex Rideout)。ほぼ全編をプロデュースしている。彼はレディシィ(Ledisi)やウィル・ダウニング(Will Downing)、メイサ(Maysa Leak)などを手がける、どちらかというとジャジー~クワイエットを得意としている人。しかし、ここでは可能な限りストリートに寄ってみた、といった“意識”を感じる。
その感覚は②「You Told Me」③「Say That You Will」といったアップで確認することができる。R&Bチャートでは90位にしか上りきれなかったが、②は後期ニュージャックらしさ全開で、多少BPMを落として聴きやすくしていたり、若き日のハーブ・ミドルトン(Herb Middleton)が提供する③も、時代こそ感じてしまう音質だが、どちらともこの時代においても充分楽しめるクオリティである。
-スロウはお手の物-
レックスが得意とするスロウ系はハズすはずも無い。アダルト感満載なミディアム①「Please Tell Me Tonight」をはじめ、タイトル曲の④「More Than Magic」などは、鍵盤の音がやはり目立ち、ウィル・ダウニングが歌っていてもおかしくないような、落ち着いた雰囲気が楽しめる。そのなかでも、モティーフ(Motif)のメンバーとともに作った⑧「Forbidden Love」は、前出のとおり、ニュー・ジャックとクワイエットがうまく溶け合った快作である。
-偉大な原曲を現代風に-
また、カヴァーを2曲入れることでさらに可能性を広げる。マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル(Marvin Gaye & Tammi Terrell)の⑥「You're All I Need To Get By」は、原曲よりも音数を増やしたり、会話を散りばめたりと現代風にアレンジした元気いっぱいの楽曲に仕上げている。アシュフォード&シンプソン(Ashford & Simpson)の楽曲は、世紀を跨いでも本当良いと改めて思い知らされた。もう1曲は、テンプテーションズ(The Temptations)の⑩「Just My Imagination (Running Away With Me)」。こちらは可愛く、ポップに仕上がっている。
-レックスともう一度…-
メンバーのダリエンが手がけたクワイエット系スロウ⑨「What's Going Wrong」の出来もまずまずだっただけに、その後も見たかったグループ。この時代はそんなグループがあまりにも多いのだが…。レックスと組んだモティーフにもう一度出会いたいものである。
(2011.11.08)