-大ヒットの後を受けて-
デビュー作だった『Meant To Be Mint』からシングルとしてリリースされた「Breakin' My Heart(Pretty Brown Eyes)」は、POPチャートで6位、さらに92年の年間チャートでも48位に入る大ヒット。今もミント・コンディションといえばこの曲!という方も多いと思われるこの曲は、ミントの代名詞的な存在となった。
それに続く2ndは、ある意味本当の実力を試されることとなるわけだが、そんなプレッシャーのなか制作されたのがこの作品である。
-ミント色-
今回も前作同様に、ジャム&ルイス(Jimmy Jam & Terry Lewis)がエグゼクティヴ・プロデューサーを務めつつも、全曲をメンバーで制作するスタイル。ジャム&ルイスは、もともとプロデュースするアーティストの色を濃く押し出すというスタイルだから、ミントにしっくりはまる。今回もしっかりとミント色を押し出している。
その筆頭格は、「Breakin' My Heart(Pretty Brown Eyes)」の方法論をたどった⑥「U Send Me Swingin'」である。ストークリー(Stokley)の甘い声に甘いメロディーがこの上ないほどに溶け合う。面白いのは、この楽曲を作ったのはメンバーのケリ・ルイス(Keri Lewis)[*1]であり、「Breakin'…」は、こちらもメンバーのローレンス(Lawrence Waddell)、ストークリー、ジェフリー(Jeffrey Allen)という違う顔ぶれだところ。ここがミントの強さであり、凄さ、実力であろう。
-ミネソタを思い浮かべる-
上記同様スロウの秀作は⑤「Someone To Love」と⑪「So Fine」[*2]である。特に⑪については、殿下(Prince)が1995年にリリースしたバラード「Eye Hate U」を先取りしたような狂おしいソウル。もちろん同郷の天才の影響は受けているメンバーであろうから、こういった曲が生まれることもよくわかり、殿下がパクったなんて毛頭思うはずもないわけだが、狂気的なギターとスロウの組み合わせは酷似している。プリンスとジミー・ジャムというミネアポリスの大物らがいて、そしてセントポール出身のミントいるという図式を描かずにはいられない。これを頭に入れれば、⑯「Fidelity」のようなロッキッシュな楽曲が収録されることも理解が出来る[*3]。
-その他も-
冒頭からのアフリカンテイスト、②「Nobody Does It Better」でのパーカッション、そして②~③「If It Feels Right」へつながるグルーヴ感など、パースペクティヴ(Perspective Records)からの第1弾アーティストとしてリリースされたサウンズ・オブ・ブラックネス(The Sounds Of Blackness)を彷彿とさせる。この生音の重たいグルーヴがはまると抜け出せない。
また、ニュージャックな⑨「Good For Your Heart」やストークリー自身が、自分の声質を理解した上で作曲したような、トロピカンな⑩「Harmony」、トニーズ(Tony Toni Toné)の「It Never Rains(In Southern California)」のようなというと怒られそうだが、ギターのリフと甘い声で淡々と進んでいく⑬「Always」などとにかくバラエティ豊か。これもミントらしさと言える。
-全編通して前向きな恋愛を歌う-
このころのセルフ・コンテインド・バンドは正直逆風の最中だったと言えるわけだが、対照的にアルバムを通してすべての楽曲の詞が前向きな内容。その明るさがこの先も解散せずに続けている秘訣なのかもしれない。
(2022.02.19)
[*1]プロフィールの所にも書いたが、ケリは後にトニ・ブラクストン(Toni Braxton)と結婚(そして離婚)。
[*2]ギターのオデール(O'Dell)とストークリーの共作。まさしく2人が作ったであろうとうなずけるほど、ヴォーカルとギターを軸においた作品といえる。
[*3]とはいえ、苦手な筆者であった。。。