1. 『Love Redemption』
  2. JAE MICHALS(MIKKI BLEU)
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『Love Redemption』(2013)2013
mikki_bleu honeyland

Review

-手に入れるまでのストーリー-

前作『Back In Tha Building』はとにかく流通が少なく、筆者も注文したもののキャンセルを食らってしまい、結局未聴のまま・・・。オークションでも出品があれば良い方で、かなりのレア盤になってしまった。そもそも11年ぶりの新作であったことから、とてつもなく期待していた。そのためこのエラーには大きなショックを受けており、現在もそれを引きずったままである。2008年当時は、今ほどではないにしてもインディ作品も手に入りやすくなりつつある環境だった。そんな状況でも手に入らない・・・。もう次作はないんだろうか・・・と半ば諦めていた。

そんな事もあり、2008年以降はミキについての検索を頻繁に行っていた。そのようななかで目にしたのが本作。ジェイ・ミカエルズ??ん?知らんなぁと思って記事を読み進めると、なんとミキの別名であることが判明。こころが小躍りしてしまうのがよく分かるほど喜んでしまったのは言うまでもない。今度は念には念をいれ・・・同じもの2枚を別々の場所で注文し、万全を期した[*1]。ようやく手にしたミキの新作。前評判から間違いない作品だろうと思っていたが、本当にそのとおりの期待通りの1枚になっていた。

-待っていた“ミキのソウル”-

今回もどれをベストにして良いかどうか分からないほど粒ぞろいの楽曲が並んでいる。冒頭の①「Never Can Say Goodbye」から、どことなく密閉感のただようスロウで、筆者のような待ちわびたファンを喜ばせてくれる。続く②「Angry Love」も繊細なコーラスにミキのファルセットから始まる、どこか折れてしまいそうな楽曲だが、これはミキの声質にしっくりとハマる。ピアノで始まる③「2nd Time Around」も同様に繊細なスロウ。この上記3曲は横揺れの組曲のように、あまりに切ないメロディラインの波状攻撃で、ここまでを聴いた時点で名作だと確信できる。

フックのような、ミキにしてはバウンシー(といっても本当に優しいもの)な④「Official」に続くのは、アコースティックな⑤「Joy」。スナップとアコースティック・ギターが有益に溶け合い、さらに後半にはファルセット~コーラスとシンプルな作りで、温かさが演出されている。このと同様なのは、ピアノとクラップに加えて、サビまでのファルセットで高揚した気持ちを、サビの入口(「Why~」)で解放するような感覚が楽しめる⑧「Why Things Change」。こちらも淫靡な部分は含まれていなくても、しっかりと“ミキのソウル“を展開してくれている。

-世界観は決して壊さない-

多少リズム感が出てくるのが、ささやくように言葉を積み重ねて行き、そこに怪しさが加わってくる⑥「Can U Hear Me Now」や、ミディアムでありながら緊張感のある⑨「Something About A Woman」になってくる。しかし、あくまでこの作品の中ではスロウの扱いにしていないだけであり、TPOによってはスロウに近いものと言える。そのため、アルバム全体の雰囲気を邪魔するものではなく、きちんと溶け込んでくれている。
 むしろ異質といえるのは、アコースティック・ギターの弾き語りである⑪「You + Me = Love」であろう。いままでの作品ではこういった無機質でロウなものは無かったわけだから、少し面食らう部分があった。しかし楽曲も約1分半で、インタールード的な扱いということもあり、こちらも全体を邪魔するものではない。

最後を飾る⑫「Without A Woman」は、再び①~③のような、切ないメロディラインに、優しくベースとキーボードが施されていて、これもミキ信者にはたまらない。この楽曲で閉めてくれたことで、統一感がより増したように感じた。

-短い時間も、濃い味付けと思えば-

全体で約37分。時間的には正直物足りないのであるが、それは贅沢というもの。まずはこうして手に届く作品をドロップしたくれたことに感謝をしたい。しかし、現時点での最新作になっている。リリースから9年、そろそろ次作を本気で期待したい。

(2022.07.16)

[*1]結果2枚ともきちんと届いた。この作品を少しでも知ってもらうべく、1枚はリリースしてしまった方が良いのではと思いつつ、今日まで所有し続けている・・・。

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