-ヒットを願っての船出-
紆余曲折を経て、ようやくリリースできたソロデビュー作である。ダラス(Dallas)のナイトクラブを経営する中国系アメリカ人であるトミー・クオン(Tommy Quon)がマネージャーとなり、ミキをヒットさせ儲けようとしていた頃なので、配給もEMIとなった。しかし、結果はヒットせず…。この後のミキの作風を考えれば当然とも言えるかもしれないが、クオンの思惑通りにはいかなかった。
ヒットを狙ったというところもあり、作品は当時の時流であったニュー・ジャック・スウィングによるものだった。その中にスティーヴィーのカヴァである⑤「Knocks Me Off My Feel」や、歌い出しからギターの入り方までプリンスといえる⑩「Stand」など、少し商業的なところが見え隠れしている。どちらも悪いわけではないのだが、ミキがやる必要ってあるの!?と思ってしまうものだった。
-変則的な転調-
しかしながら、それ以外の楽曲にミキの才能がきちんと宿っている。タイトル曲の①「I Promise」や②「Lock-N-Key」は、思いっきりチャッキー・ブッカー(Chuckii Booker)のような音作りではあるものの、Bメロにその緊張感からの解放ともいえるような転調を用意しているところは、この後のミキの楽曲作りの礎がみえてくるようである。
その中でも、よりミキらしい魅力を引き出しているのは、ミディアムの③「Something Real」。どことなく切ない感じと、目立たないギターのリフが配されていて、妖艶とまではいかなくても雰囲気を持った楽曲。また、もう少しスロウに寄せたミディアムの⑨「Can He Rock You Like This」は、①②同様にBメロからの転調がうれしい。この普通じゃない流れがクセになるところなのだろう。
-意外なゲストが-
ほとんどの楽器を自分でこなしていることから、ゲストはいないのかと思いきや、なんとシャンテ・ムーア(Chanté Moore)の名前が!録音がLAだった[*1]こともあり、デビュー前の彼女が参加したのだろう。②③⑤⑩でその声を聴かせてくれている。
(2021.04.04)
[*1]1967年生まれの彼女はサンフランシスコ出身。10代の頃はサンディエゴでモデルをやっていたそう。この作品の録音時は22歳くらい。1992年のデビューに向けてLAで準備していた頃ではないだろうか。クレジットにもワーナー所属と書いてある。